国内

元刑事が語る、捜査の行方を左右する指揮官としての条件

犯人逮捕は指揮官の采配次第?

 警察の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、実際の捜査における指揮官の素養について解説。

 * * *
「指揮官がまずくて失敗したケースは山ほどある。恥ずかしくて言えないほどね。捜査の方向をどう判断すればいいか、そこまでの計算ができない指揮官はダメだな」

 警視庁(本庁)の課長まで務めた元刑事に、捜査を指揮する者にとって大事なポイントは何かと問うと、アゴをさすりながらそう答えてくれた。

「例えばだ、被疑者が隣の県に逃走したとする」

 東京都は警視庁の管轄だが、隣り合う4県は警察庁各県警の管轄である。どの県警とも常日ごろから連携や協力体制が取れているかといえば、そうでもないらしい。特に本庁と神奈川県警はあまり仲がよくないという噂も聞いている。

「今はそこまでではないだろうけど…」と元刑事は前置きした。

「神奈川県警は本庁に敵対意識があった。都と県の境なのに、なぜか国境みたいになるんだ。国境を越えると一緒にうまくできないんだな。他の県警が本庁と捜査する時は“教えてください”とか、“一緒にやらせてください”とか言ってくるが、神奈川は“なんで一緒にやらないといけないの”というスタンスだったね。そういう県もあるから、県との境界線、県境をまたぐ事件は指揮官の考え方次第だったな」

“県境”という言葉に、犯人を追跡している最中、交通違反で神奈川県警に捕まったという他の元刑事の話を思い出した。他の県警では、こういう捜査で犯人を追跡中だと説明すれば許してくれたが、神奈川だけは絶対に許してくれなかったというのだ。本来は「ここから神奈川県に入ります」と県警に無線で連絡しなげればいけないのだが、追っかけている間に犯人が県境を越えてどんどん入ってしまえば追わざるをえず、交差点で一時停止違反を取られのだと聞いた。

「そこは指揮官がどうやっていくかという判断だよ。間に合わなければ強行突破するしかないが、そん時は協力してもらえるよう体制を組めばいい。協力を頼んで断られたら、後で何か言われた時に『協力の要請を断ったのはそっちだろう。あなたの所に情報を提供する理由はない。捜査上の秘密を話す必要もない。何もしてくれなかったのはそっちなんだ。関係ないから引っ込んでろ』とズバッと言えばいいんだ」

 飄々と話しているが、元刑事の語気は強い。こういう時、捜査の指揮官がガツンと言えずにだらしないと、県警との間でごちゃごちゃしてくることになるという。

「捜査を指揮する者は、自分の是々非々で捜査をする。だから思い切った手を打っていかないとダメだ。躊躇している暇はない。細かい捜査のやり方を現場で教えるなんてやってられないから、細かいことは現場に任せればいい。どう判断すればいいのか、あがってくる情報を元に計算をしていく。指揮官は大筋で、絶対に間違いのない方向に捜査を行かせることだけだ。それが指揮官の責任で、失敗したら指揮官が謝ればいい」

 だが、絶対に手順を間違ってはいけない捜査があるという。

関連記事

トピックス

大谷の母・加代子さん(左)と妻・真美子さん(右)
《真美子さんの“スマホ機種”に注目》大谷翔平が信頼する新妻の「母・加代子さんと同じ金銭感覚」
NEWSポストセブン
トルコ国籍で日本で育ったクルド人、ハスギュル・アッバス被告(SNSより)
【女子中学生と12歳少女に性的暴行】「俺の女もヤられた。あいつだけは許さない…」 執行猶予判決後に再び少女への性犯罪で逮捕・公判中のクルド人・ハスギュル・アッバス被告(21)の蛮行の数々
NEWSポストセブン
二階俊博・元幹事長の三男・伸康氏が不倫していることがわかった(時事通信フォト)
【スクープ】二階俊博・元自民党幹事長の三男・伸康氏が年下30代女性と不倫旅行 直撃に「お付き合いさせていただいている」と認める
NEWSポストセブン
雅子さまにとっての新たな1年が始まった(2024年12月、東京・千代田区。写真/宮内庁提供)
《雅子さま、誕生日文書の遅延が常態化》“丁寧すぎる”姿勢が裏目に 混乱を放置している周囲の責任も
女性セブン
M-1王者であり、今春に2度目の上方漫才大賞を受賞したお笑いコンビ・笑い飯(撮影/山口京和)
【「笑い飯」インタビュー】2度目の上方漫才大賞は「一応、ねらってはいた」 西田幸治は50歳になり「歯が3本なくなりました」
NEWSポストセブン
司忍組長も姿を見せた事始め式に密着した
《山口組「事始め」に異変》緊迫の恒例行事で「高山若頭の姿見えない…!」館内からは女性の声が聞こえ…納会では恒例のカラオケ大会も
NEWSポストセブン
浩子被告の顔写真すら報じられていない
田村瑠奈被告(30)が抱えていた“身体改造”願望「スネークタンにしたい」「タトゥーを入れたい」母親の困惑【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
「好きな女性アナウンサーランキング2024」でTBS初の1位に輝いた田村真子アナ(田村真子のInstagramより)
《好きな女性アナにランクイン》田村真子、江藤愛の2トップに若手も続々成長!なぜTBS女性アナは令和に躍進したのか
NEWSポストセブン
筑波大学・生命環境学群の生物学類に推薦入試で合格したことがわかった悠仁さま(時事通信フォト)
《筑波大キャンパスに早くも異変》悠仁さま推薦合格、学生宿舎の「大規模なリニューアル計画」が進行中
NEWSポストセブン
『世界の果てまでイッテQ!』に「ヴィンテージ武井」として出演していた芸人の武井俊祐さん
《消えた『イッテQ』芸人が告白》「数年間は番組を見られなかった」手越復帰に涙した理由、引退覚悟のオーディションで掴んだ“準レギュラー”
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「激しいプレイを想像するかもしれませんが…」田村瑠奈被告(30)の母親が語る“父娘でのSMプレイ”の全貌【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン