もちろん中には説教クサいと感じた人もいたかもしれません。が、若い世代も含め多くの視聴者が、素直にメッセージを受け取ったことが「ドラマ後の反応」によく現れています。そう、ストーリーの展開にも驚きましたが、何より一番驚かされたのはドラマが終わった後の、現実の変化でした。

 最終回後、動画配信サービスHuluで始まったオリジナルストーリー『3年A組-今から皆さんだけの、卒業式です-』にはアクセスが殺到、接続できない状況が続いた。まあ、ここまでは人気ドラマだし理解できる。本当に驚かされたのはその後です。サーバーダウンしたHuluに対して、普段なら不満がつのった人が罵詈雑言を書き込んで炎上したはず。しかし今回は炎上しなかった。

「落ち着いて待とうよ」「仕方がないこと」「文句書いてんじゃねえよ。柊から何を学んだんだよ」と呼びかけたネット上の人々。即座に叩くのではなく改善を待つ、という冷静なリアクション。あまり見たことのないクールダウンの光景です。

 柊のコトバが、お説教ではなかったという証ではないでしょうか。

 柊にビビッドに反応したのは、視聴者だけではありません。高校生役の役者たち29人のみずみずしさ。素直に感情を揺さぶられ目に涙をため、柊のコトバに生々しくリアクションした彼・彼女ら。その表情に魅せられた視聴者も多かったはず。

 ドラマが終わった後も、高校生役の役者たちは次々に自らの考えを発信しました。自殺した景山澪奈役の上白石萌歌さんは「彼女の痛みに寄り添えるよう、死について考え、向き合おうとしていました」とブログで振り返り、同じく高校生役・川栄李奈さんは「SNSでの誹謗中傷やイジメ面と向かっては言えないくせに 顔のバレないネット上だと好き放題言ったり SNSは便利ですが苦しむ人もたくさんいるということ」とインスタグラムに書いた。

 どんなに荒唐無稽な舞台設定のフィクションであっても、視聴者や出演者にとって密度の濃い時間が流れ、社会について考える体験となったことは間違いなさそうです。これまで「ドラマは社会を映す鏡」と度々記してきましたが、今回のドラマはさらに一方進んで、社会をほんの少しでも変えていく具体的な力になりうることを見せつけられました。

 …と、この原稿を書いているさなか、「高校2年生 ネットいじめを訴えるメモを残して自殺」というニュースが流れてくる。SNS動画で拡散したバイトテロによって営業停止し研修を実施した飲食業についての報道も。今後、『3年A組』が発した願いは、現実の中で本当に生き続けるのか。行動を少しでも変えていく力となるのか。いやそれとも、多くの前例同様に一時的なブームに過ぎず、あっという間に忘れ去られていくのか? 

 最終回に永野芽郁さん演じる茅野さくらが語った言葉は、「先生の願いが誰かに伝わっていればいいな」。そう、柊の授業はまだ始まったばかりです。

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