「会談がうまくいき、朝鮮半島が統一することを強く望みます」(リーダーの女性)
金氏が宿泊するメリア・ホテルのそばでロシアの新聞社の取材を受ける30代の韓国人女性(2月26日、筆者撮影)
取材にそう答えていた彼女とメンバーの手には、「今、会いに行きます」とハングルで書かれた小旗が握られている。聞けば彼女らのグループは「朝鮮半島統一」を目指して活動する韓国の民間団体だという。米朝首脳会談に合わせて韓国から遠路はるばる訪越し、ホテルの外で 金氏の“出待ち”をするほどの熱心さに、驚きを禁じ得ない。しかも、韓国から来ていた「民間団体」は彼女らだけではなかった。
27日夕方──いよいよ会談が近づくと、会場のメトロポール周辺は報道陣や野次馬でごった返していた。そんな中、ホテルを背に、報道陣や群衆に向けてB4判ほどの紙を無言で掲げる数名の韓国人グループがいた。そこにはハングルで「大朝鮮、経済封鎖を解除し、終戦宣言と平和協定へ」と書かれている。彼らは韓国で「朝鮮半島統一」をアピールするNGO「自主平和統一連隊」のメンバーだという。前日のグループ同様、世界的に注目される米朝首脳会談の場を利用して、悲願である「南北統一」を訴えていたのだ。
会談場所のメトロポールの人垣の中で紙幕を掲げる韓国人(2月27日、筆者撮影)
北と南に分かれて同じ民族同士が戦争をしたという意味で、韓国・北朝鮮とベトナムには共通点がある。北側(共産主義)が勝って統一を果たし経済発展を続けているベトナムと、未だ休戦状態の朝鮮半島。ベトナムの成功に自らを重ねて米朝会談に期待する韓国人の心情も、十分理解できる。
だが一方で、韓国には「ベトナムに対する加害の歴史」から目を逸らし続けているという現実がある。
ベトナム戦争時、韓国は米軍に次ぐ規模(延べ32万5000人超)の兵を投入し、その間、ベトナム中部のあちこちで虐殺事件を起こした(韓国軍の派兵は1965年10月~1973年3月)。さらに、現地の婦女を強姦し、多くの「ライダイハン(韓国人男性とベトナム人女性の混血児)」が生まれた。
これまでに判明したベトナム戦争時の虐殺事件の現場は100か所以上、被害者数は最大3万人だという(北岡俊明・北岡正敏著『韓国の大量虐殺事件を告発する』より)。私自身、これまで10年以上韓国軍による虐殺事件の被害者遺族やライダイハンらの取材を続けているが、未だその全容は明らかにできていない。ベトナム戦争時の虐殺事件といえば、504人が犠牲となった米軍による「ソンミ村虐殺事件」(1968年3月)が有名だが、そうした蛮行を、韓国軍も犯していたのだ。
家族5人を韓国軍による虐殺事件で失ったグエン・ティ・タンさん(撮影当時55歳。2015年6月、クアンナム省で筆者撮影)