アップルをキャッシュリッチな企業に変えた経営指標のCCC
◆30兆円のキャッシュを積み上げた武器
キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)という経営指標をご存じだろうか。企業が商品を販売してから、現金化するまでにかかった日数のことで、資金効率を表している。CCCは小さいほど資金効率が良いことを意味し、CCCがプラスの値では運転資金の調達が必要だが、マイナス値になれば資金調達の必要性はない。
1998年にアップルに入ったティム・クックは、オペレーションの責任者としてアップルのサクラメント工場などを次々閉鎖し、生産を外注に出した。これにより無駄な在庫を無くし、在庫回転率を上げ、キャッシュを積み上げていくのだった。
では、アップルのCCCを見てみよう。1993年から1996年まではCCCはプラス116日から50日と散々だったが、クックがアップルに来た翌年1999年にはマイナス25日とマイナス値への劇的な改善を成し遂げた(別掲図)。
さらに2002年にはマイナス40日と進化していく。これに伴い、アップルはキャッシュをどんどん積み上げて行くことが可能となった。ジョブズは資金繰りの心配をしないで、得意の新製品開発に情熱を傾けることができた。
2018年度のアップルのCCCはマイナス84日だった。参考に日本の製造業をみると、パナソニックがプラス約22日、トヨタはプラス約27日で、アップルの凄さは際立っている。
ジョブズが亡くなった時のアップルは、約9兆円のキャッシュを積み上げていた。そしてティム・クックがCEOを引き継ぐと、ピーク時には約30兆円ものキャッシュを貯めたのだ。