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2019.03.30 07:00  NEWSポストセブン

ジョブズなきアップルが30兆円のキャッシュを貯められたワケ

◆アップルは「ファブレス型企業」ではない?

 アップルはiPhoneなどの生産を外注に委託しており、外注先の代表格は鴻海精密工業(台湾)だ。工場を持たない企業を「ファブレス」と呼ぶ。製品設計を終えると、あとの製造は外注先に丸投げするというのがファブレス企業の一般的なやり方だ。

 その意味では「アップルはファブレス企業ではない」と言うべきだ。アップルは、外注先の工場での生産にまで口を出し、多くの技術者を送り込み、細かくコントロールしているからだ。それはまるで自社の工場を持って、管理しているかのようだ。

 新製品の立ち上げ時期にはアップルの担当者が外注の工場近くのホテルに泊まりこみ、連日生産ラインに張り付いては、納期通りに出荷できるように厳戒態勢で臨んでいた。さらに量産が安定してからも抜き打ちで工場チェックを行うなど、決して手を抜かない。

 それだけでなくアップルは、部品サプライヤーでの部材の生産から出荷、納品の日程についても、アップルと共有できる管理システムを入れさせている。こうすることで、サプライヤーでの生産計画に関して、1か月、2か月先までの製造予定を1日単位で把握し、問題があれば素早く手を打つことが可能だ。

 iPhoneの新製品が急激に凄い数量を立ち上げることができたのは、こうしたオペレーションのきめ細かいマネジメントがあってこそだった。その中心人物がティム・クックだった。

 アップルというとiPodやiPhoneなど革新的な新製品にばかり目が行きがちだが、泥臭いオペレーションの仕事をティム・クックが一手に引き受けたから、ジョブズは資金繰りに悩むことなく、新製品開発にエネルギーを注ぐことができたわけだった。

 ただし、どれだけオペレーションの力が凄くても、製品力そのものが劣っていては話にならない。iPhoneの卓越した製品力とティム・クックの綿密なオペレーション力がタッグを組んだから30兆円のキャッシュが貯まり、iPhoneは15億台以上売れたのだ。どちらでも欠けていたら、今のアップルの栄光はなかった。

 しかし今、そのアップルが大きな曲がり角に来ていることは確かだ。

●たけうち・かずまさ/経営コンサルタント。コンサルティング事務所「オフィス・ケイ」代表。松下電器(現パナソニック)を経てアップルで勤務。著書に『イーロン・マスク 世界をつくり変える男』(ダイヤモンド社)ほか多数。最新刊『アップル さらなる成長と死角』(ダイヤモンド社)が2019年3月に発売。

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