「今回の提携は、孫さんによるグーグルへの“宣戦布告”です。孫さんは長年にわたって対グーグル戦略を虎視眈々と練ってきました。『IT企業は30年で限界を迎える』が持論の孫さんにとって、創設21年目のグーグルは、これからピークアウトしていく企業。ソフトバンクがグーグルに挑むには、今が絶好のタイミングと踏んだのでしょう」
孫氏は昨年7月に行なわれたソフトバンクの法人向けイベント「Softbank World 2018」でこう発言している。
「(我々のように)グーグルと競合しているいろんな他の会社は、グーグルマップを使いたくないわけですね」
その挑戦的な物言いからは、「グーグル超え」を目指す孫氏の姿勢が見て取れる。
◆自動運転が産む「巨大な富」
孫氏とグーグルが「地図データ」を重要視するのは、アプリ利用における地図の利便性に留まらず、地図データが「自動運転」技術のカギになるからだ。自動車ジャーナリストの桃田健史氏が解説する。
「将来、自動運転車両が無事故で公道を走るためには、人間の操縦がなくとも正確に道路を走行できる高精度の地図情報が不可欠です。それも、現在カーナビやスマホで使われている地図ではなく、車線の広さや道路の起伏、高さ制限などを含めた『立体地図』が必要になります。
それゆえ、地図市場は現在の規模から今後大きく成長する可能性が高い。グーグルも孫氏も、自動運転車両の実現を睨んで、高精度の地図情報を集めるために動いているのです」