高級弁当だけではない。専門の医学会や医師向けの講演会など、多くの医師が集まる場で新薬の治療成績について説明が行なわれる。そうした場では“権威ある医師が公正中立な立場で学術的な評価をしているかたち”をとって薬の宣伝が行なわれるという。
「講演会の座長や演者になると、製薬会社から多額の謝金が支払われます。1~2時間程度で行なわれる講演の謝金相場は、大学教授や院長クラスだと10万円以上。遠隔地で開かれる場合は旅費や宿泊費、飲食費も製薬会社持ちです。
薬の解説やパンフレットの原稿料、コンサルタント料として謝金が支払われる場合もあります。その道の権威である学会の理事や大学教授が、自社の薬にお墨付きを与えてくれる、こうしたかたちの宣伝スタイルは世界中で行なわれています。
高度な専門知識を一般の医師に講演会を通して普及させること自体は必要なことでもあり、合法なやり方ですが、それが行き過ぎると、効果のない薬や副作用の多い薬が金儲けのためだけに処方されてしまう危険性が生じる」
◆年収2900万円の“副業”
米国では2000年代になってこうした製薬会社と医師の間の経済的な利害関係が問題視され、2010年には製薬会社などに医師との金銭的関係を政府機関へ報告するよう義務づける医療制度改革法が制定された。現在では企業から医師へ渡った金額などが、インターネットの複数のデータベースで検索・閲覧できる。患者自身が“医師と製薬会社のカネのやり取り”の実態を見られるのだ。
翻って日本は、情報公開が遅々として進んでいない。
「2011年には日本でも、製薬会社が医療機関や医師へ提供している資金の詳細を公開することが決まりました。しかし、閲覧手続きの煩雑さなどから、日本における“透明化”は有名無実と化しています」