また、そもそも仕事のやり方が旧態依然である。たとえば、今や会議はネットを使えば世界中どこにいても参加できるのに、わざわざ支店や営業所から本社に呼び集めている。そうした従来の仕事のやり方そのものを変えずに一部だけアウトソーシングやIT化を行なっても、生産性は上がらない。
仕事のやり方を本質的に変えるためには、ホワイトカラーの仕事に「キー・パフォーマンス・インジケーター(KPI=重要業績評価指標)」を策定し、それに基づいて定型業務の人員を大幅に削減しなければならない。そして、削減した人たちは営業、販売、商品開発などに移すか、極端に評価が低い場合は退社してもらう。そのような働き方改革を推し進めないと生産性は上がらないし、結果的に賃金も上がらないのである。
ところが、政府がやろうとしている「時間外労働の上限規制」「年次有給休暇の取得義務化」「同一労働同一賃金」という働き方改革は、仕事の「内容」ではなく「外形」を変えようとしているだけであり、完全にポイントがずれている。しかも、すでに企業の人事労務部門をはじめとする従業員は労働時間の管理などのために新たな間接業務が増えている。また、中小企業庁の調査によると、大企業の働き方改革対応で、下請けの中小企業がシワ寄せを受けるケースが増えているという。これでは本末転倒というか、明治時代に逆戻りだ。働き方改革は実際には“働き方改悪”であり、まさに噴飯ものである。
※週刊ポスト2019年4月12日号