ビジネス

なぜ今、藤田田なのか マック創業者の「金儲け書」復刊の訳

日本マクドナルド創業者の故・藤田田氏(撮影/横溝敦)

日本マクドナルド創業者の故・藤田田氏(撮影/横溝敦)

 松下電器(現パナソニック)の松下幸之助、本田技研工業(ホンダ)の本田宗一郎、ヤマト運輸の小倉昌男など、名だたる大企業を一から築き、繁栄させた創業者たちに共通しているのは、決して人真似ではない独自の経営哲学や生き様を体現し続けたことにある。その類まれなるビジネスセンスやベンチャー精神は、今なお色褪せることなく著作物等を通じて語り継がれている。

 伝説的な名経営者といえば、この人も例外ではない。日本マクドナルド創業者の藤田田(でん)だ。

 東大在学中に高級雑貨輸入業の「藤田商店」を創業した藤田は、1971年に大手商社や食品メーカーを押しのけ、米国マクドナルドと合弁で日本法人「日本マクドナルド」を設立。東京・銀座の一等地、三越銀座店に1号店をオープンさせて以降、ハンバーガーという全く新しい食文化を瞬く間に日本中に根付かせた。その後、ファストフード業界を席巻するマクドナルドの躍進ぶりは周知の通りだ。

 藤田の略歴を記すと、「外資系企業を軌道に乗せただけでは?」と皮肉る向きもあろうが、日本での成功は単なる“米国流”の継承とは異なり独創性の高いものだった。

 藤田の生前、マクドナルドの広報部から依頼され2時間近くインタビューし、『日本マクドナルド20年史』に「藤田田物語」を書いたことのある外食ジャーナリストの中村芳平氏(近著に『居酒屋チェーン戦国史』がある)がいう。

「藤田さんは米国マクドナルドの創業者であるレイ・クロック氏に認められ、請われて合弁会社の日本マクドナルドを作ったのですが、その出資比率は50対50、しかもアメリカのアドバイスは受けるが命令は受けない、経営は日本人がやる──とエリアフランチャイズ(AFC)ではあり得ない日本優位の条件を呑ませました。日本マクドナルドは外資系ではなく“外枝系”(技術・ノウハウだけ提供を受ける)だ、と。

 それだけではありません。店名もアメリカ人の『マクダーナルズ』という発音は日本人には馴染まないとして『マクド・ナルド』に変えました。旧制松江高校の同級生を特攻隊で死なせた戦争経験世代の藤田にとって、決してアメリカの言いなりにはならず、日本発祥のハンバーガー店として成功させてみせるという強い意気込みがあったのです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン
高羽悟さんが向き合った「殺された妻の血痕の拭き取り」とは
「なんで自分が…」名古屋主婦殺人事件の遺族が「殺された妻の血痕」を拭き取り続けた年末年始の4日間…警察から「清掃業者も紹介してもらえず」の事情
(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
熱を帯びる「愛子天皇待望論」、オンライン署名は24才のお誕生日を節目に急増 過去に「愛子天皇は否定していない」と発言している高市早苗首相はどう動くのか 
女性セブン
「台湾有事」よりも先に「尖閣有事」が起きる可能性も(習近平氏/時事通信フォト)
《台湾有事より切迫》日中緊迫のなかで見逃せない「尖閣諸島」情勢 中国が台湾への軍事侵攻を考えるのであれば、「まず尖閣、そして南西諸島を制圧」の事態も視野
週刊ポスト
盟友・市川猿之助(左)へ三谷幸喜氏からのエールか(時事通信フォト)
三谷幸喜氏から盟友・市川猿之助へのエールか 新作「三谷かぶき」の最後に猿之助が好きな曲『POP STAR』で出演者が踊った意味を深読みする
週刊ポスト
ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
今年6月に行われたソウル中心部でのデモの様子(共同通信社)
《韓国・過激なプラカードで反中》「習近平アウト」「中国共産党を拒否せよ!」20〜30代の「愛国青年」が集結する“China Out!デモ”の実態
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《自宅でしっぽりオフシーズン》大谷翔平と真美子さんが愛する“ケータリング寿司” 世界的シェフに見出す理想の夫婦像
NEWSポストセブン
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(時事通信フォト)
《潤滑ジェルや避妊具が押収されて…》バリ島で現地警察に拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26) 撮影スタジオでは19歳の若者らも一緒だった
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(Instagramより)
「球場では見かけなかった…」山本由伸と“熱愛説”のモデル・Niki、バースデーの席にうつりこんだ“別のスポーツ”の存在【インスタでは圧巻の美脚を披露】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
NEWSポストセブン