◆大事なのは「有意味感」
また、仕事や会社に関わることに限らず、長い人生のうちには、災害や病気など「把握可能感」や「処理可能感」だけでは歯が立たない事態に遭遇することもある。そのような想定外の大きな壁に直面したら、どう対処すればいいのか?
「そんな時に最も頼りになるのは、目の前の現実に対して、『乗り越える価値がある(どんなことにも意味がある)』と思える『有意味感』です。
もし『今の職場で働く意味』を見いだせずに悩んでいるのであれば、入社前に自分が持っていた『思い』と『今、この壁を乗り越えることの意味』を自分に問い、自身をひたすら掘り下げていくべきだと思います」
しかし、それでも「今の職場で働く意味」を見いだせないという結論に至った場合はどうすべきなのか? 「首尾一貫感覚」に関する研究では、「有意味感」は、自分が「あきらめる」ことや「折れる」ことも、それが先見性や合理性のある選択であれば、肯定されることがあるのだという。
「首尾一貫感覚の観点からすると、『挑戦する意味(価値)がある困難』には対処すべきとなりますが、『挑戦する意味(価値)がない困難』には立ち向かわなくてもいいということになります。もし、どうしても今の会社や仕事に『意味』を見いだせないのであれば、自分の心がまだ健康なうちに、“何であれば意味を見いだせるのか”を考え、ポジティブに退職や転職を視野に入れるといいと思います」
「だいたいわかった」「なんとかなる」「どんなことにも意味がある」――。
この「首尾一貫感悪」を持てるかどうかが、「雇用ミスマッチ」や「5月病」を乗り越えるカギとなりそうだ。
【プロフィール】舟木彩乃(ふなき・あやの)/ストレス・マネジメント研究者。10年以上にわたってカウンセラーとしてのべ8000人以上の相談に対応。現在、筑波大学大学院ヒューマン・ケア科学専攻(3年制博士課程/ストレス・マネジメント領域)に在籍。著書に『「首尾一貫感覚」で心を強くする』。