芸能

福山雅治『集団左遷』での顔芸は新境地なのか空回りなのか

舞台は銀行(番組公式HPより)

 現在のドラマのラインナップの中で最も強力な「枠」の一つがTBSの日曜劇場だろう。近6作のうち4作(『陸王』『99.9 刑事専門弁護士 SEASON II』『ブラックペアン』『下町ロケット』)で最高視聴率15%超えを果たしている。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析する。

 * * *
 『集団左遷!!』(TBS系日曜午後9時)がいよいよ始まりました。日曜劇場はTBSドラマの看板枠、しかも福山雅治主演とくれば大注目、失敗は許されない。スタート第1回目の視聴率は13.8%(関東地区)と、かなりの数字を記録。局もほっと胸をなで下ろしているでしょう。 

 さて、物語の主人公は……三友銀行に勤務するサラリーマン・片岡洋(福山雅治)。蒲田支店長に抜擢され喜びに浸るもつかの間、実は蒲田支店は廃店候補の筆頭でノルマ「100億円増」という不可能に近い目標値を設定される。達成できなければとりつぶし、行員たちはリストラという危機に直面し、片岡支店長の奮闘が始まり……。

『半沢直樹』から生まれ出た、いわゆる「企業ドラマ」の定型を踏んでいます。演出やテイスト感もあえてそこへ寄せている気配。背広に七三分けの登場人物がズラリ。社会状況や業界用語を解説する女性のナレーションが響く。現実を連想させる企業名や看板、部署名にテクニカルターム、組織の不条理に対峙する主人公、そして何よりも企業もの常連役者・香川照之の登用……。

 という定型の中、突飛な感じで浮き上がったのが福山さんの新芸風です。眉毛を大きく上下させ、目玉をギョロつかせ、感情を激しく表す。まるで香川照之さんの持ち芸の踏襲か。

 いやいや、福山さんが駆使するのは顔の筋肉だけではありません。全身を使い疾走したり、車にぶら下がったり、ずぶ濡れになったり、土下座したりとまあ忙しい。

 そうした新芸風に対して賛否両論が渦巻いています。「大袈裟過ぎて似合わない」「コメディアン風がむしろ浮いている」「カッコイイクールなイメージが強かったから、空回り感が半端ない」と大なり小なり違和感を抱く視聴者が多いもよう。

 果たしてこの挑戦を、福山さんの「新境地開拓」ととらえるのか、それとも「ドタバタは似合わない」と切って捨てるのか。

 私自身は、画面を見てそれとはまた違うことを感じました。これって既視感。どこかで見たことがある。どこで見た像だろうか……と記憶をたぐっていくと、いきあたった。これって「古典的身体系ギャグ」のパターン。「ビジュアル・コメディ」のジャンルでは。

 しがみついたまま車が発進してしまって大慌て。机に突っ伏したら真っ二つに割れてずっこける、といういわば古典的なお笑いパターンを「意図的に」トレースしているのでは。そうした「ビジュアル・コメディ」の大御所といえば、Mr.ビーン。今回のドタバタ系福山は、どこかMr.ビーンを彷彿とさせるものがありそう。

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン