最初の整形を受けた後、当時の女性誌の美容整形外科広告に整形前と整形後を比較する形で写真が掲載された。その広告に使用された整形前の写真には、どこか幼さが残る可愛らしい、十分に整った顔立ちの女の子が写っていた。今でいうと乃木坂46メンバーですと言われても不思議がない、男性からも人気が集まりそうな顔だった。きっと誰もが整形なんて必要ないと思うはずだ。
しかし、周囲がうらやむような可愛い顔は、彼女にとっては苦痛でしかなく「何もかも嫌、何もかも変えたい、別人になりたい」という思いだけが日に日に強くなっていく。そして21歳、結婚が3年で破綻したとき、最初の整形手術を決意した。念願の「別人になる」ためだ。
「可愛いって思われがちな丸顔の原因となっているエラ(下顎角の骨)を削って、顎を出して、耳の軟骨をとって、それで鼻を少し高くして、二重の幅も大きくハッキリとした、彫りの深い外国人のような顔にしました。全部で費用は360万くらい。両親はもちろん反対したけれど、最後は折れて費用も出してくれました。あのときは確か、父親が株を買うために用意したお金がまとまってあったので……そのお金で手術しました」
全身麻酔の大手術もまったく怖くなかった。
「だって、歯医者のほうがよっぽど痛い気がする。ただ、輸血もしたし大変だったかな」
美少女アイドルのような幼さが残る可愛いらしい顔は、手術後には目元のきりっとしたシャープな美人タイプの顔に変わった。そして、顔が変わったことで彼女自身のメイクの好みも変わった。それまでは薄いナチュラルメイクだったのが、強めのアイラインを入れ、真っ赤な口紅、髪をぎゅっと高めに結ぶスタイルになった。新しい自分を手に入れた自信、強くなりたいという心の叫び、そこへ向かう決意を揺るぎないものにする覚悟が込められたかのようなメイクだった。
整形後、ほどなく正式に離婚が成立。同じ頃、父母とともに訪れた香港をとても気に入り、移住を決意した。中国返還前で英国領だった香港は、街も人も何もかもが活気に溢れていた。食べ物も美味しい、何より夜景が最高に美しかった。香港の生活は、離婚、そして拒食症にも苦しんだ彼女を元気づけてくれた。整形で新しくなった彼女は、そこで起きたトラブルにも、以前とは違う対処ができるようになっていた。
「香港でもストーカーはされました。ちょっと彫りの深い強めの顔になったら、今度はインド人男性がインドの有名女優に似ているって言い寄ってきて、本当にしつこかった。あの頃はインド人が多く住んでいるところに暮らしていたんだけれど、カレーを買いに行っても、しつこく追いかけられて大変だった。でも、前よりずっとはっきり何でも言えるようにもなったから、結婚していたときのように追い詰められることはありませんでした」