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韓国内の「慰安婦論争のタブー」 見せしめにされるケースも

 これがタブー視される理由は、すでになされたいくつもの「見せしめ」により、慰安婦という「日帝」の被害者に対する「不可侵性」が人々の頭の中に深く刻み込まれているからだ。

◆罷免され、謝罪を強要された大学教授たち

 2017年、韓国である大学教授の発言が国民の怒りを買った。順天大学A教授が講義室内で、「私が思うには、お婆さんたちは実はほとんどわかっていて行ったんだ。わかるか? 連れて行かれた女たちも元々、その気があったんだよ。ついて行ったんだ」と話したのが問題になったのだ。

 2018年1月、光州地方検察庁順天支庁は、この発言が「元慰安婦たちへの侮辱」(名誉毀損)だと断じ、A教授を不拘束起訴(日本の在宅起訴に相当)した。これを受け大学は懲戒委員会を開き、A教授は罷免された。

 このような「見せしめ」の中で最も有名なのは世宗大学の朴裕河教授が発表した『帝国の慰安婦』という書籍をめぐる訴訟だ。この書籍で朴教授は、韓国社会が抱いていた、日本=悪意の加害者、慰安婦=善意の被害者、という二分法的な論理から脱却し、日本を批判しつつも、韓国内の慰安婦に対する認識、対応についても鋭く批判、問題を提起した。

 同時に、慰安婦が登場することになった時代的背景、日韓の葛藤が生まれた過程、慰安婦問題に対する誤解と間違いなどに言及、その内容は既存の慰安婦関連の「通説」とは大きく異なるものだった。この朴教授の試みは高い評価を受け、2013年8月に韓国で発刊された際のメディアの書評はいずれも好意的な内容だった。

 ところが、韓国での発刊から約10か月後にあたる2014年6月、元慰安婦9名が朴教授を告訴したことで、事態は一変した。慰安婦たちは著者が本の中で「慰安婦被害者たちを売春婦、日本軍の協力者と表現した」と朴教授を批判したのだ。

◆「この本の出版は公共の利益にならない」

 朴教授を告訴した原告と検察の主張の中には荒唐無稽なものも少なくない。例えば、「この本の出版は〈公共の利益〉にならない」、「少女像を冒涜した」といった主張だ。

「公共の利益にならない」とはいったいどういう意味か? 韓国人を不愉快にし、反感を招くような意見を述べることは自制し、自粛すべきだという意味だろうか? 国民感情を恐れて言いたいことを言えない雰囲気こそが公共の利益に反する事態ではないだろうか?

 国民感情の逆鱗に触れたとしても、懐疑的な観点から、歴史に新しい解釈を加えようとする試みを保障することこそが公共の利益となるのではないだろうか?

 しかし、今の韓国における公共の利益、国益とは、それが正しいか、正しくないかの問題ではない。それよりは、韓国が恥をかくか否か、損をするか否かが「公共の利益」を決める要素になる。

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