国際情報

韓国内の「慰安婦論争のタブー」 見せしめにされるケースも

韓国で「慰安婦」は“神聖不可侵”の存在。タブーに触れることは許されない(AFP=時事)

「慰安婦問題」といえば、日本と韓国の間で対立する問題と思いがちだ。しかし、『韓国「反日フェイク」の病理学』を上梓した韓国人ノンフィクション・ライター崔碩栄氏によると、韓国国内においても慰安婦問題をめぐる論争が存在し、そこには“触れてはいけない”タブーがあるという。

 * * *
 慰安婦問題について語ろうと思った時、韓国人であれば誰もがいったんは躊躇し、萎縮するだろう。なぜならば、韓国社会が記憶し、韓国人が認める「通説」の枠から1ミリでも外れた主張を展開することには相当なリスクが伴うからだ。

 慰安婦に対する通説の否定は許されるものではなく、懐疑的な意見を述べたり、新しい解釈を試みるだけでも、社会的な攻撃の対象となり、あるいは魔女狩りのターゲットにされかねない。学者であれ、ジャーナリストであれ、この問題に触れるときは相当なプレッシャーから逃れることはできないだろう。

 韓国で語られている通説は、次のようなものだ。

〈日帝は1930年代初頭にはすでに軍の慰安所を設置し、我が国の女性たちを徴発し、戦争末期には組織的に多くの女性たちを徴発し日本軍「慰安婦」として利用した〉(『高等学校韓国史』教学社 2013年)

〈一部の女性たちは日本軍慰安婦として連行されるという苦痛を経験した。日本軍は満州侵略当時から軍慰安所を運営してきたが、戦争末期にはこれをさらに組織化し、朝鮮を含む中国、東南アジアなどの地で、女性たちを集団で強制連行し、性奴隷として扱ったのだ〉(『高等学校韓国史』天才教育 2012年)

 法律に次のように定義されている点を見ても、このような一般的な認識が韓国人にとって確信と化していることがわかる(この法律は1993年制定。この定義は2002年に追加されたもの)。

〈日本軍慰安婦被害者とは日帝により強制的に動員され性的虐待を受け、慰安婦としての生活を強要された被害者を指す〉(日帝下日本軍慰安婦被害者に対する生活安定支援及び記念事業等に関する法 第2条)

 実際、戦時中の新聞や記録を見ていくと慰安婦の募集経路や待遇は一様ではなかったことがわかるが、現在韓国に広がっている通説は、強制連行、奴隷のような生活といった「被害性」にのみ焦点が当てられている。そして、これを否定することはもちろんのこと、これを疑ったり、他のパターンに目を向けることすらもタブー視されているのである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン