諸説ありますが、「心付け」の金額の目安は、日本旅館の場合は「宿泊費の1割程度」。ただ、4、5人で泊まって宿泊費の合計が6、7万だったとしても、1割にこだわる必要はなく、3000円か5000円か、何だったら2000円でも十分というのが昨今の定説。渡す人が少数派になったおかげで、金額は関係なく渡すだけで相手は驚きと喜びを感じてくれるし、自分自身も「人がやらないことをしている」という気持ちを味わえます。
引っ越し業者さんには、お茶代+お昼ご飯代になるぐらいが相場。たとえば来てくれたのが1~2人なら2000円、3~4人なら5000円でしょうか。お風呂やトイレをリフォームしてくれる業者さんにも、1日で終わるなら同じぐらい。2日以上かかるならもう少し色をつけて。大工さんには、最初にまとめて「お茶代」として渡したり、ペットボトルのお茶を箱で買って渡したりというケースが多いようです。
何度も強調しますが、あくまでも「こっちがしたくてやること」なので、もっと張り込んだ金額でも相手は怒らないし、逆に引っ越し業者さんに「助かりました」と感謝しつつペットボトルのお茶1本を渡すだけでも十分です。見栄を張る必要も無理をする必要もありませんが、数千円の出費で、相手に喜んでもらえて自分も渡す快感も味わえて、旅行だったらいい気分で過ごせて、引っ越しだったら新生活を気持ちよくスタートできることを思えば、かなりコストパフォーマンスがいい出費だと言えるでしょう。
「1円でも余分に払ったら損」「向こうは仕事なんだから感謝なんてしたら損」と思っている人には、残念ながらこの手の「得」は味わえません。そして、せっかく「心付け」を渡せるチャンスがあっても、相手を下に見て「ほら、とっとけ」という態度や発想しかできない人も、「心付け」がもたらしてくれる幸せとは無縁です。
なかなか微妙で難しい行為ですが、だからこそ挑み甲斐があるというもの。大人としてひと皮むけるための課題として、人生をより楽しくするための手段として、「心付け」という文化を利用させてもらいましょう。「そんな面倒臭いことしてられるか!」「時代遅れのくだらない習慣だ!」と思った方は、読み流していただいてけっこうです。