特に非婚化や少子高齢化が進む今、家族は〈贅沢品〉になりつつあり、歌舞伎界や皇室が注目を集めるのも、その継承の物語が既に虚構に近いからではないかと。
「何々屋に誰が嫁いだとか、眞子様のお相手がどうといった話は、皆の大好物。ただし自分が“家”の中に取り込まれるのは嫌で他人事だから楽しめるんです。
昔の家制度は誰かの我慢の上に成立したわけで、もうそんな我慢ができる人は少なくなっています。国は家族による介護や看取りを美徳のように推奨しますが、他人同士だから優しくなれる側面もあると思うし、老後を過ごす相手も血縁や婚姻関係に限る必要はないと思う。
私もこの本を書いていて気づかされたのですが、性愛抜きのカップルとか、〈セックスが介在しない家族〉がいてもいいんですよね。現に女友達と幸せそうに暮らしている友人がいるし、性別も人数も、いろんな家族形態を自由に選択しながら助け合っていける世の中になればいいなあと。男女の法律婚のみが正しい型、という考えのままでは、一人で生きる人は増える一方。子供がいるから安心というわけでもない。家族もトランスフォームしていくのではないでしょうか」
そう言って制度や法整備の必要にも言及する酒井氏。どんな形であれ、家族にはやっぱりいてほしいからだ。
【プロフィール】さかい・じゅんこ/1966年東京生まれ。高校在学中からコラムニストとして雑誌『Olive』等で活躍し、大学卒業後、広告会社勤務を経て独立。2003年発表のベストセラー『負け犬の遠吠え』で婦人公論文芸賞、講談社エッセイ賞をW受賞し、「負け犬」は2004年の流行語に。著書は他に『女子と鉄道』『ユーミンの罪』『地震と独身』『裏が、幸せ。』『子の無い人生』『男尊女子』『百年の女「婦人公論」が見た大正、昭和、平成』『駄目な世代』等。158cm、O型。
構成■橋本紀子 撮影■国府田利光
※週刊ポスト2019年6月7日号