一方で、問題をさらに複雑にしているのが、アメリカ政府の動きです。トランプ大統領は、保護主義的な動きを強めており、日本の自動車産業が「国家安全保障を危うくしている」と批判を繰り返しています。さらに、4月27日に安倍首相が訪米して行った日米首脳会談において、日本側がアメリカでの自動車工場建設に400億ドル(約4兆4600億円)の投資を行うことを約束したと発表しました。
アメリカ商務省は、日本やEUからの自動車や自動車部品輸入によって、アメリカの自動車メーカーの市場シェアが低下していることが、国家安全保障を危うくしていると主張しています。これに対して、5月17日にトヨタはアメリカで記者発表を行い、「私たちのアメリカへの投資が歓迎されていないというメッセージをトヨタに送るものだ」と強い調子で批判しています。
日本自動車会議所の内山田竹志会長(トヨタ自動車会長)も、「米国の経済に最も貢献しているのは日本の自動車産業だと思う」としたうえで、今後の日米交渉で日本企業がさらなる米国投資を強いられた場合、「むやみに生産が米国にシフトすれば、日本のサプライチェーンが立ち行かなくなる」と国内生産の減少を危惧しています。
5月25日からのトランプ大統領の訪日に際しては、異例ともいえるほどの歓待ぶりを見せた日本政府。しかし、25日に駐日アメリカ大使公邸で開催された夕食会では、豊田会長や各自動車メーカーの経営者を前にして、トランプ大統領は「貿易に関して、日本は長年、有利な状況に立ってきた」「今後はもう少し公平になっていくと思う」「数か月後には非常に重大な発表を行えると期待している」などと発言し、強硬姿勢を崩そうとはしていません。