ビジネス

トヨタ社長「終身雇用難しい」発言をどう読み解くべきなのか

5月25日、財界人との夕食会で豊田章男社長(写真手前)の名前を出して挨拶したトランプ大統領(写真/時事通信フォト)

5月25日、財界人との夕食会で豊田章男社長(写真手前)の名前を出して挨拶したトランプ大統領(写真/時事通信フォト)

 5月25日~28日に来日したトランプ米大統領は、日米貿易交渉に関して強硬姿勢を崩さない構えを見せた。今後、追加関税や対米輸出規制などを迫られる可能性がある自動車業界のトップは危機感を募らせているが、じつは豊田章男・トヨタ自動車社長が発言して物議を醸した「終身雇用は難しい」の真意も、こじれる日米貿易に対する強烈なメッセージだった。神戸国際大学経済学部教授の中村智彦氏がレポートする。

 * * *
 5月7日に日本経済団体連合会(経団連)の定例会見の席上、中西宏明会長(日立製作所会長)が終身雇用制度について、「制度疲労を起こしている。終身雇用を前提にすることが限界になっている」、「雇用維持のために事業を残すべきではない」などと発言し、大きな話題となりました。

 こうした中、今度は、5月13日の日本自動車工業会(自工会)の2019年度定時総会で豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が「終身雇用を守るのは難しい」と発言したと、多くのメディアが報道し、批判する意見も多くみられました。しかし、筆者の周囲の自動車産業の関係者の多くは、その報道に違和感を持ったと指摘していました。

 出席していた関係者の話や報道などから整理すると、豊田会長は定例記者会見でまず経団連の中西会長の発言について質問され、「雇用を続ける、雇用を拡大している企業に対して、もう少しインセンティブをつけてもらわないと難しい局面にきている」と述べたことが分かります。

 さらに総会後の懇親パーティーの際、豊田会長は例年にはない挨拶を行い、その中で「日本での生産が減ると雇用も守れなくなる。令和をそのような時代にしたくないので日本を強くできるよう頑張っていきたい」と述べています。

 一部の報道では、これらを豊田会長が「終身雇用は難しい」と発言し、経団連の中西会長の発言を追認したように問題視する意見が多く見られたのですが、よく読むとかなり印象が違っていることが理解できるでしょう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
松本智津夫・元死刑囚(時事通信フォト)
【オウム後継「アレフ」全国に30の拠点が…】松本智津夫・元死刑囚「二男音声」で話題 公安が警戒する「オウム真理教の施設」 関東だけで10以上が存在
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
9月1日、定例議会で不信任案が議決された(共同通信)
「まあね、ソーラーだけじゃなく色々あるんですよ…」敵だらけの田久保・伊東市長の支援者らが匂わせる“反撃の一手”《”10年恋人“が意味深発言》
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
8月に離婚を発表した加藤ローサとサッカー元日本代表の松井大輔さん
《“夫がアスリート”夫婦の明暗》日に日に高まる離婚発表・加藤ローサへの支持 “田中将大&里田まい”“長友佑都&平愛梨”など安泰組の秘訣は「妻の明るさ」 
女性セブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン