◆少数派を無視しない
──スナック菓子業界にはカルビーという巨人がいるが、どう立ち向かいますか?
佐藤:経営していくうえで私が決めているのは、「競合他社は一切見ない」ということです。ライバルを意識していたのでは、どこかで戦略に既視感が出てきます。右に倣えの“Me too”な商品しか出てこない。それはお客様にもすぐ見抜かれてしまう。「二番煎じの商品なんて要らない」とそっぽを向かれてしまいます。
企業規模が価値と思われるお客様ばかりではありません。むしろ、小さくてもキラリと光るものを求めていらっしゃる消費者が増えているように思います。
──しかし、湖池屋のようなオーダーメイド商法には手間暇やコストがかかるのでは?
佐藤:そこは仕方ないと割り切っています。少数派のニーズを無視していては新しいものは生まれませんから。時代や消費者の嗜好の変化の風を察知し、どこよりも早くそこに取り組んで変化への投資を惜しまない。それがマーケッターとしてやってきた私の役割です。今後、スマート農業みたいな分野に入っていくことも必要でしょう。
会社を進化させていくためには、まず社長である私が進化していかねばならないと考えています。
【PROFILE】さとう・あきら/1959年東京都生まれ。1982年、早稲田大学法学部を卒業後、キリンビール入社。1997年にキリンビバレッジ商品企画部に出向し、「FIRE」「生茶」などヒットを連発。2008年にキリンビールに戻り、2014年からキリンビバレッジ社長。2016年にフレンテ(現・湖池屋)執行役員兼日清食品ホールディングス執行役員に転じ、同年9月より現職。
●聞き手:河野圭祐(ジャーナリスト)/1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2019年7月12日号