ビジネス

千葉・小湊鉄道 あえて駅前に「森」をつくっている理由

養老渓谷駅前。10年かけて、森づくりが進行中

養老渓谷駅前。10年かけて、森づくりが進行中

 駅前開発という言葉を聞くと、駅ビルや駅前ロータリーを新築・改築するなど建造物を新しくすることを思い浮かべる。ところが、駅前に植林をする開発を沿線で試みる「逆開発」に着手している路線がある。ライターの小川裕夫さんが、小湊鉄道がチャレンジする駅前逆開発について、レポートする。

 * * *
 鉄道会社は、運賃や特急料金などの運輸収入が利益の大半を占める。しかし、団塊の世代が現役から引退し、通勤需要は激減した。今後も人口減少が進み、通勤・通学需要は増加する気配はない。運輸収入は増収増益を見込めない。

 鉄道会社はターミナル駅併設の百貨店をリニューアルしたり、エキナカには話題性があるブランド店を誘致したりしている。運輸収入をカバーしようと、鉄道会社はあの手この手で需要の創出を図っているのだ。

 駅の集客力・拠点性を高めることで、生き残りを模索している。そのため、副業ともいえる不動産業・観光宿泊業・飲食業・小売業にリソースを傾ける。

 それは、営利企業としては自然な流れでもある。一般的に、沿線開発は不動産価値の最大化を目的にしている。

 一般的な沿線価値の高め方とは一線を画した手法で、自社の沿線価値を高めようとする鉄道会社がある。それが、千葉県市原市を地盤とする小湊鉄道だ。

 市原市の人口は、約27万人。市の玄関駅となる五井駅から東京までは、電車で約一時間。千葉までだったら20分前後。そうした地形的な面から、市原市は千葉や東京のベッドタウンとして発展してきた。

 小湊鉄道は、五井駅から終着の上総中野駅まで約39.1キロメートルの路線を有する。ターミナル駅である五井駅はJRと合わせて一日平均2万人の利用者があるものの、多くの駅は一日の利用者が100~500人。なかには、数人にとどまる駅もある。

 そして、小湊鉄道の泣き所は車両・駅・施設が老朽化している点にある。

「もっとも古い車両は1961年製で、新しい車両でも1977年製です。最新車両でも40年が経過しており、小湊鉄道では車両更新が急務になっています。さらに、小湊鉄道は全駅でSuicaをはじめとしたIC乗車券に対応していません。そのため、運転士と車掌の二人体制で列車を運行しています」と話すのは小湊鉄道開発部の黒川雄次部長だ。

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン