地球磁場逆転地層として世界から注目されるチバニアンの最寄駅として、月崎駅は利用者が増えている。そんな月崎駅の駅前に、“森ラジオステーション”が造成されている。
これは駅前にあった保線の旧詰所小屋を苔と山野草で覆ったアート作品で、「いちはらアート×ミックス2014」時に制作された。制作者は美術家の木村崇人さんで、地元住民も政策に協力。芸術祭終了後、地元住民の要望で作品はそのまま残されることになり、現在は地元のNPOが管理している。
養老渓谷駅も月崎駅も、利用者の大半は観光客。日常的に利用する通勤・通学客はいない。そうした利用実態から、養老渓谷駅の逆開発も月崎駅の森ラジオステーションも沿線外から観光客を呼び寄せる観光コンテンツづくりの一環という見方もできなくない。
しかし、小湊鉄道はメインターミナルの五井駅まで森づくりの範囲を広げようとしている。
「五井駅はJRとの共同使用駅ですが、駅東側は小湊鉄道の所有地です。詳しいことを決めるのはこれからになりますが、この区画にも木を植える計画を進めています。いずれは、小さな森のようにしたいと思っています」(同)
小湊鉄道の沿線は春になると菜の花が咲き誇り、観光客や鉄道写真を撮ろうとする人たちが多く集まることでも有名になった。その菜の花畑は、小湊鉄道と市原市、地元住民が休耕田を活用するために始めたプロジェクトでもある。車窓から広がる里山の風景や菜の花畑は、いまや小湊鉄道にとってかけがえのない財産になっている。
菜の花畑の成功体験が、月崎駅の森ラジオステーションや養老渓谷駅の逆開発へとつながっている。
小湊鉄道の一味違った沿線開発手法は、地域開発が目標とする「人口増」や「都会化」という考え方に一石を投じた。小湊鉄道が取り組む”沿線開発”に、今後も注目が集まる。