朝鮮半島情勢に詳しいジャーナリストの赤石晋一郎氏が解説する。
「今年に入ってから韓国の大手メディアなどで、マレーシアで暗殺された金正恩の異母兄・金正男氏の息子であるキム・ハンソル氏が米CIAの手引きで米国に入り、FBIの保護のもとニューヨーク郊外で生活していると報じられました。すでに20代半ばのハンソル氏は金正日の孫にあたり、北の後継者となる資格がある人物です。米国は“ポスト金正恩”を見越して、ハンソル氏を保護しているとの見方が広がっているのです」
当初、ハンソル氏を保護していたとされる脱北者団体・自由朝鮮も米当局と連絡を取り合う関係にあり、彼らの反体制活動が北にとって厄介な存在となっているのは間違いない。そうしたなか、米国政府は“ハンソル・カード”をチラつかせることで、「いつでも体制転覆できる」というプレッシャーを金正恩にかけ続けられる。つまり、そのカードはトランプにとっての“ジョーカー”にあたるというのだ。
「かつてトランプは北朝鮮に対して『炎と怒りに直面することになる』と軍事攻撃を示唆したことがあるように、その予測不能な行動を金正恩は最も怖れている。一方でトランプにとっては北に核放棄プロセスを実行してもらわなければ面子が丸潰れとなる。その両者の思惑が合致し、まず歩み寄ろうとしたのが今回の電撃会談だったのです」(同前)
そして米国の保護下にあるとされるハンソル氏の処遇は、金正恩の出方によって左右されることにもなる。