ライフ

名古屋ネタライター『トラとミケ』は名古屋メシが美味しそう

『トラとミケ いとしい日々』を名古屋ネコライターはどう読んだ?

 6月18日に発売になるや、発売1週間で重版が決まるなど、大きな話題を呼んでいる単行本『トラとミケ いとしい日々』。フルカラーで描かれた猫たちの姿にSNSでは「癒される!」の声、多数。「やっと重版分が入荷しました。でもすぐ無くなりそうです。次はいつ入るかなぁ」とある書店員さんがつぶやくなど、入荷したそばから売れていく人気ぶりなのだ。とりわけ人気となっているのが名古屋。実は作者・ねこまきさんが住む、この漫画の舞台の場所でもある。「名古屋」のプロはどう読むのか。名古屋ネタライター大竹敏之さんが『トラとミケ』の書評を綴る。

 * * *
「ぐつぐつ」煮込まれたどての鍋に「じゅわわ」と揚がった串カツを「とぷ」とつける。どて飯の温玉乗せは熱々のご飯を「ほく」と箸で持ち上げる。食欲を刺激する擬音と合わせて描かれる“名古屋めし”がとにかくおいしそう。

「ごくごく」「ぐびび」「ぷはー」とあちこちでビールが空けられる様子にも、のどがゴクリと鳴ってしまう(味の濃い名古屋めしにはビールが合う。実際、名古屋ではビールの消費量が酒類の中でダントツに多いのだ)。

 高架を走る赤い電車を降り、踏切を渡ったらどて味噌のいい香りが漂ってくる赤提灯「トラとミケ」。

 気のいい老(猫)姉妹がきりもりする老舗居酒屋には、夜な夜ななじみの顔ぶれが集う。ガララと開ける木戸に、瓦の庇の上には屋根神様(名古屋周辺独特の民家の屋根の上にある祠)。「いつものちょーでぁ」「今日は早いがね」と飛び交うこてこての名古屋弁。

 ほのぼのとした絵柄も含めて古きよき時代のノスタルジーが漂うが、舞台はあくまで現代(スマホが出てくるし、作中出てくる書類に『平成31年』の記載がある)で、こういう飲み屋が今でもちゃんと存在することを示してくれている。そう。ここに描かれているのは決してファンタジーの世界ではなく、令和の世にもリアルに生き残っている昭和の空間であり、つつましくもしっかりと根を張った商売のあり方であり、あけすけながらも相手を思いやる人情の交錯なのだ。登場するのはすべて猫、だけど。

 飲んべならこんな居酒屋を探して飲みに行きたくなること間違いなし。食いしん坊ならこんな風につまめる名古屋めしを求めて名古屋へ行きたくなること間違いなし。本作をグルメ漫画と呼ぶのはちょっと語弊があるかもしれないが、飲食店や料理が核となる物語において最も重要なのはそれを食べたい!と思えるか否か。そういう点では本作はまぎれもなく読み手の食欲を刺激する、正しいグルメ漫画といえる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

太田房江・自民党参院副幹事長に“選挙買収”工作疑惑(時事通信フォト)
【激震スクープ】太田房江・自民党参院副幹事長に“選挙買収”工作疑惑 大阪府下の元市議会議長が証言「“500万円を渡す”と言われ、後に20万円受け取った」
週刊ポスト
2024年5月韓国人ブローカー2人による組織的な売春斡旋の実態が明らかに
韓国ブローカーが日本女性を売買春サイト『列島の少女たち』で大規模斡旋「“清純”“従順”で人気が高い」「半年で80人以上、有名セクシー女優も」《韓国紙が哀れみ》
NEWSポストセブン
村上信五とマツコ・デラックス
《不適切編集謝罪も街頭インタビュー継続》『月曜から夜ふかし』は存続できるのか? 問われる根本的な問題「一般人を笑い者にする演出」「笑いの手数を追求するスタッフのプレッシャー」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【国立大に通う“リケジョ”も逮捕】「薬物入りクリームを塗られ…」小西木菜容疑者(21)が告訴した“驚愕の性パーティー” 〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
国技館
「溜席の着物美人」が相撲ブームで変わりゆく観戦風景をどう見るか語った 「贔屓力士の応援ではなく、勝った力士への拍手を」「相撲観戦には着物姿が一番相応しい」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【20歳の女子大生を15時間300万円で…】男1人に美女が複数…「レーサム」元会長の“薬漬けパーティ”の実態 ラグジュアリーホテルに呼び出され「裸になれ」 〈田中剛、奥本美穂両容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
前田亜季と2歳年上の姉・前田愛
《日曜劇場『キャスター』出演》不惑を迎える“元チャイドル”前田亜季が姉・前田愛と「会う度にケンカ」の不仲だった過去
NEWSポストセブン
フィリピン人女性監督が描いた「日本人の孤独死」、主演はリリー・フランキー(©︎「Diamonds in the Sand」Film Partners)
なぜ「孤独死」は日本で起こるのか? フィリピン人女性監督が問いかける日本人的な「仕事中心の価値観」
NEWSポストセブン
timelesz加入後、爆発的な人気を誇る寺西拓人
「ミュージカルの王子様なのです」timelesz・寺西拓人の魅力とこれまでの歩み 山田美保子さんが“追い続けた12年”を振り返る
女性セブン
不倫報道の渦中にいる永野芽郁
《私が撮られてしまい…》永野芽郁がドラマ『キャスター』打ち上げで“自虐スピーチ”、自ら会場を和ませる一幕も【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
電撃引退を発表した西内まりや(時事通信)
電撃引退の西内まりや、直前の「地上波復帰CMオファー」も断っていた…「身内のトラブル」で身を引いた「強烈な覚悟」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
NEWSポストセブン