国内

町田市が進める「東京化」 多摩都市モノレール延伸が肝か

立川南駅を走る多摩都市モノレール。市民の足として活躍中

立川南駅を走る多摩都市モノレール。市民の足として活躍中

 東京都で東京23区、八王子市に次ぐ人口を抱える町田市は、神奈川県ではなく東京都南部に位置する。主要幹線道路が交差する交通の要所でもあるが、公共交通機関を利用して立川や府中など同じ東京都多摩地区の北部へ行くには大きく迂回しなければならない。この不便を解決するために計画されている多摩都市モノレール延伸構想について、ライターの小川裕夫氏が町田市の取り組みをレポートする。

 * * *
「町田は神奈川」

 ネット上では、そんなジョーク混じりの言説がたびたび飛び交う。

 東京都町田市が神奈川県と揶揄される理由は、過去に町田が神奈川県に属していたこと、新宿駅から小田急線に乗って町田駅に到着するまでに何度も神奈川県を通過すること、町田駅を発着するバスに神奈川中央交通が大半を占めること、市の拠点となる町田駅が神奈川県境のすぐ近くにあることなどが挙げられる。

 駅前の家電量販店・ヨドバシカメラは、町田市と相模原市をまたぐように立地しており、駐車場への入出庫時はナビが「神奈川県に入りました」「東京都に入りました」とせわしなく繰り返す。

 ジョークとはいえ、町田市にとって神奈川県と揶揄されるのは忸怩たる思いがあるだろう。そうした苦い思いを抱えながら、町田市は“東京化”を強める取り組みを着々と進めている。

 その目玉として、昨年4月1日に町田市は都市政策課から独立分離させる形で新たに多摩都市モノレール推進室という特命の部署を立ち上げた。多摩都市モノレール推進室担当者は、こう話す。

「小田急線もそうですが、主要道路でも町田市はいったん神奈川県に出なければ東京都のほかの都市に出られません。そうした地理的な面から『町田は神奈川』と言われてしまうわけですが、多摩都市モノレールの町田駅延伸が実現すれば立川とつながります。なにより、町田駅が多摩の拠点になります。そうした意味からすると、多摩都市モノレールの早期延伸は町田市にとって非常に重要な政策です」

 現在、多摩都市モノレールは立川北駅・立川南駅を軸に、北は上北台駅まで、南は多摩センター駅までの約16キロメートルの区間で運行している。

 多摩センター駅から南への延伸計画は、以前から検討されてきた。計画は遅々として進まなかったが、2016年4月に国土交通省の交通政策審議会が「具体的に調整を進める路線」と答申。これが、延伸計画を一気に前進させた。

 交通政策審議会の答申は多摩都市モノレールの延伸を後押しするものだったが、それだけでモノレールが実現するわけではない。答申を受け、東京都が事業認可を受けなければならない。

 目下、東京都は東京五輪開催や、その後に着手しなければならない跡地開発で手一杯。とても、ほかの事業にまで手を回せる余裕はない。そのため、多摩都市モノレールの事業認可は2025年度を予定している。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン