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井上円了から水木しげる、京極夏彦まで…妖怪研究の150年

「青鬼」(「百鬼夜行絵巻」より)

 今年4月にオープンした公立博物館としては世界初の“妖怪”博物館とされる広島・三次市の「湯本豪一記念日本妖怪博物館」(三次もののけミュージアム)が、年間目標来館者10万人に対して開館からわずか2か月で5万人を記録。他にもこの夏各地で“妖怪”展覧会が開催予定と、世はまさに妖怪ブームだ。

 日本の伝統文化と“もののけ”たちは、どのように関わってきたのか? 平成最後の御進講を務めた小松和彦・国際日本文化研究センター所長が語る

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「妖怪」という言葉の起源は、それほど古くはありません。明治の半ば頃に哲学者の井上円了が立ち上げた「妖怪学」が定着していったものです。それまで妖怪は、化け物や鬼といった言葉で表現されていました。

 人々が生活する中で出会う怪異、例えば、聞こえるはずのない場所からする不審な音などの「現象」を、妖怪という「存在」に置き換えたもの、というのが妖怪の定義の一つです。

 彼らの存在は平安時代の説話集『今昔物語集』にみられ、やがて絵巻物に描かれていきます。木版技術の発展した江戸時代には、大量の妖怪画が出回り、娯楽として大衆に親しまれていました。

 妖怪を初めて学問として研究したのが井上円了であり、彼の研究は妖怪を合理的に解明しようとするもので、いわば妖怪を撲滅するものでもありました。文明開化の時代なので、大衆に残る迷信めいたものから解放されなければ、新時代を生きられないとの思いがあったはずです。井上に触発されて続いたのが民俗学の柳田国男らでしたが、戦争や西洋科学への傾倒の影響などもあり、妖怪研究はしばらく低迷することになります。

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