東京23区浸水危険度マップ
「たとえて言えば、洗面器をお風呂に浮かべ、水が入らない程度に押さえつけた“洗面器の底”がゼロメートル地帯です。浴槽の水面より低いところにある洗面器の底に住宅が建ち並び、洗面器の縁、すなわち薄い堤防でなんとか浸水を防いでいる。豪雨だけでなく、地震などでも堤防が壊れれば雨が一滴も降らなくても洪水が押し寄せます。常に危険と隣り合わせの、リスクが高い場所なのです」
ゼロメートル地帯が水害に弱い地域であることは感覚的に理解できる。さらに言うと、その“洗面器の底”にも凸凹があり、水が流れ込んできた時、低地には一気に水が集中することになる。その場所こそ、水害最危険地点といえる。
土屋さんは見分ける1つの方法として「地名」を挙げる。
「危険な場所は、実は地名から判断できます。水に関係した地名がついた場所は特に警戒した方がいい」
たとえば東京には「四ツ谷」や「日比谷」「渋谷」「市ヶ谷」など谷のつく地名が多いが、実際に標高の低い「谷」であることがほとんど。埋め立て地を示す「埋め」の当て字であることが多い「梅田」なども注意すべき地名だという。
それらは“言い伝え”のレベルではなく、専門家の最新研究でも明らかになっている。2019年6月、東京大学と早稲田大学が共同研究として発表した「東京23区浸水危険度マップ」では、都心エリアのほとんどが危険地点だと指摘しているのだ。
同マップは最新技術を駆使し、東京23区内の道路や下水道、貯水施設、そして雨水を川に流すポンプ場の能力はもちろんのこと、そこにある建物の建ぺい率や容積率に至るまでのデータを分析している。マップによれば、1日に50万人が通行する渋谷のスクランブル交差点も危険地域だ。
「地形だけを考えても“ゲリラ豪雨が降ったら渋谷の交差点にいてはいけない”とはっきり指摘できます」
※女性セブン2019年8月22・29日号