目を輝かせ話を聞く芦田
僕の場合は56年間、そして愛菜ちゃんの場合は14年間、人生をかけて培ってきたマインドセットに囚われていて、そのなかの判断基準では「これは人間にやってもらう方がいい」と思っているんだけど、そういう価値観を持っていない新しく生まれてくる人たちは、どう判断するかはわかりません。案外、人間優位説というものは、そこまで根拠がなかったりするんです。
愛菜:現在の私達にとっては人間にやってもらいたいことでも、新しく生まれてくる世代にとってはAIにやってもらってもまったく問題ないかもしれない……ということですね。
山中先生:以前は、カウンセリングのカウンセラーさんなんかも、僕は「これは人間じゃないと」と思っていたんです。でも、この前、この話について議論していたら、「必ずしもそうとは言い切れないんだな」ということに気がついたんです。「いや、人間に打ち明けるのは恥ずかしい。AIのロボットのほうが、何でも言えるから気軽でいい」という人もいる。「こんなこと言ったら恥ずかしいんじゃないか」と思えることも、相手がAIだったら言える可能性もあると。そういう話をされたときに、僕も「確かにそうだな……」と思いました。
◆すべての経験をプラスにするために必要な力とは
愛菜:じゃあ、AIがどんどん進化して、人間の仕事や役割が少なくなっていくかもしれない中で、私達がこれから大切にしていくべきことは何だと思われますか?
山中先生:間違いなく言えることは、「柔軟性を身につけること」です。適応力が大切なんですね。愛菜ちゃんは、チャールズ・ダーウィンっていう人は知っていますか?
愛菜:はい、『種の起源』を書いた進化論の学者さんですよね。
山中先生:そのダーウィンが言うには、一番生き残るのは、一番強い種でも、一番頭のよい種でもない。じゃあ、どんな種かというと、一番適応力がある種だそうです。彼は何百年も前にそう言っているのですが、現代においても、この説の通りだと思います。さっきもお話したように、いま学んでいることは十年後には必要がない知識になっているかもしれませんが、それはそれでいいんです。いま学べることはいろいろと学び、経験できることはいろいろと経験する。そこで学んだことや経験したことはマイナスにはなりません。なんであれ、絶対にプラスになるんです。社会は今後も変わっていきますが、「あんな無駄なことをしなければよかった」ということは、ひとつもないんです。でも、すべての経験をプラスにするには、適応力がないとダメなんです。
愛菜:どうしてでしょうか?