笑顔を見せながら語る山中教授
山中先生:たとえば、僕が医師になった時もそうでしたが、医者になっても、多くは自分で病院を選べないんです。教授から「山中君、君は明日からこの病院に行きなさい」と言われたら、「はい、わかりました」と言って行くしかなかったんですね。
愛菜:そうなんですね。
山中先生:僕自身は外科医になろうと思っていたから、手術件数が多い病院に行きたかったんです。だけど必ずしも希望通りにはいかない。そんな時、望んでいた病院でなくても、そこでできる医療を一生懸命やれば、貴重な経験になっていくんですよ。「他の病院に移れるまで早く時間がたたないかな」なんて思いながらではなく、そこで患者さんと精一杯関わることで、学べることがたくさん出てくる。医師としても人間としても、大きくなれるんです。つまり、適応力がある人は、どこに行っても伸びることができる。望み通りにならなかったとしても、その状況をどうとらえるかは、自分次第です。
愛菜:山中先生は、そうやってご自身の道を拓いていかれたんですね。
山中先生:愛菜ちゃんと同じ世代の子供達も、これから高校生や大学生になって、いずれは仕事をしていく中で、「行きたい学校に行けなかった」「つきたい仕事につけなかった」「会社で希望の部署にいけなかった」といった挫折がいっぱい起こってくるはずなんです。でも、その時に自暴自棄になったり、やる気を失ってしまったりするのではなく、むしろそれをチャンスだととらえてほしいんです。たとえば、自分が希望していた学校じゃないかもしれないけれども、「思ってもいなかった学科があるから勉強してみよう」とか「こんなおもしろそうな先生がいるから、知らなかったことが学べる」とかね。
愛菜:はい! 私もそうやって、これからのいろんな経験をプラスの方向にとらえて進んでいけるようにします。
【山中伸弥】
やまなか・しんや。1962年大阪市生まれ。神戸大学医学部卒業、大阪市立大学大学院医学研究科修了(博士)。奈良先端科学技術大学院大学教授、米国グラッドストーン研究所博士研究員などを経て、2010年より京都大学iPS細胞研究所所長。2007年にヒトの皮膚の細胞から人工多能性幹(iPS)細胞を作製したと発表。2012年、ノーベル生理学・医学賞受賞。
【京都大学iPS細胞研究基金からのお願い】
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