座長としての意識も高い(今年3月、関係者とディナーを楽しんだ際の石原さとみ)
かつてつかこうへいの芝居『幕末純情伝』でアイドルの殻を破り、周囲を驚かせた石原さん。ドラマでも快進撃を見せた。幅のある演技が光ったのが例えば2014年の『ディア・シスター』。奔放さと無垢さ、アイドル的人物からボーイッシュまで、多面性を持つ役を演じ、女優としてぐんと伸びていきそうな期待を抱かせてくれました。
その後は『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(2016年)、『アンナチュラル』(2018年)と主演が続き、役柄もフィットして高評価。しかし、直近の『高嶺の花』(2018年)や今回の『Heaven?』のキャラは、どうにもピント外れで何だか一人相撲をとっているようにさえ見えます。
で、どうすればいいのか?
あくまで思考実験ですが、今大好評のドラマ『凪のお暇』(TBS系金曜午後10時)で黒木華さんが演じる「凪」のような人物を石原さんが演る、というのはどうでしょう。
平凡でおとなしく目立たず、同僚にすぐディスられる。真面目で空気ばかり読んで周囲にあわせる。そんな自分がイヤなのに、なかなか離脱できない人。弱みを抱え地味に生き、全てを捨てようと試みても本質はなかなか変わることができない人──といった平凡の中の人生の格闘を演じるという手は?
そろそろ派手な女王様キャラや校正者、解剖医といった特殊技能を持つ人物ではない、「ただの人」を石原さんに演じてみてほしい。肩書きも何もない現実の中で生きる地味な人を、妙な自己演出を封じ抑制して演じた時、石原さんがいかに輝くのか見てみたい。「成熟期」にさしかかった女優に、愛を込めてのエールです。