それに対し、苦しい立場に置かれるのは「より速く」「より強く」「より豪華に」といったヒエラルキーの頂点に立ってきた、メルセデス・ベンツ、BMWなどディフェンダー側のブランドであろう。
実際、最近彼らの口から漏れるのは「我々のビジネスは近いうちに激変する。ゲームチェンジにいかに対応するか」といったことが多い。ほんの10年前には、「BMWは自動車を作り始めた頃からクーペを作っている。その我々が新作を出すのだから、世界のクーペファンが注目しないわけがない」(BMWジャパン元社長のへスス・コルドバ氏)などと、実績に裏打ちされた自信満々な物言いが定番だったのが嘘のようである。
彼らとて、プレミアムセグメントのトップを競うためのクルマづくりを続けてきたのだから、その過程で得てきたノウハウは膨大なものがある。単なる速さではなく、いかに気持ちよく走るか、気分を高揚させるかといった数値化できない感性領域の作り込みはとりわけ得意分野だ。
しかし、彼らの看板はそれだけでは成り立たない。超高速を出せる絶対性能、それを安全なものにする先進装備、快適性を極限まで引き上げる人間工学といった技術の優位が、高価でもお金を出す価値のあるものなのだとユーザーを納得させる原動力であった。それが環境規制、先進技術のコモディティ化の早さ、クルマの使われ方の変化といった要因で価値が低まりかねないという状況に直面しているのだから、心中穏やかならないのも無理からぬところだ。
ジャーマン系のメーカーは自動車メーカーの中でもことさらプライドが高い。その彼らがノンプレミアムの突き上げに屈するのか、それとも何か劇的な反攻に出るのか──。今後の成り行きが興味深いところだ。
プレミアムセグメントのドイツ勢を脅かすプジョーブランド