好みによって表示を変えられる液晶ディスプレイ
3つ目のポイントは装備。先進安全技術は衝突防止や前車追従クルーズコントロールなど、今どきのクルマに求められるものは一通りついているのだが、それだけではない。
ライティングは前照灯だけでなく尾灯も後方の車両を幻惑することなく確実に視認させるアダプティブタイプとなった。さらに、ノクトビジョン、あるいはナイトビジョンなどと呼ばれる赤外線暗視システムを装備しており、夜間、道路や路肩に人や自転車などがいた場合、その存在を危険度とともにディスプレイに表示することができる。
メーター類は液晶ディスプレイ方式。欧州ではすでに珍しい装備ではなくなっているのだが、508のメーターのグラフィックデザインは美しく、かつ高精彩だ。こういう細部へのこだわりもまた、プレミアムセグメントイーターとしての資質を感じさせるものだった。これらの装備類も、コモディティ化のスピードは昔とは比較にならないほどに早まっている。すでにプレミアムセグメントの専売特許ではなくなっているのだ。
販売台数だけを見れば、新508は欧州市場においてはノンプレミアムDセグメントのトップセールスであるフォルクスワーゲンの「パサート」に販売台数で押しまくられているように思える。が、これまで販売価格はパサートが最も高く、他はパサートより安くないと話にならないと言われるこのカテゴリーで、新508はパサートより高い値付けを行い、それでも初代とは比べ物にならないくらい好調に売れている。クルマのビジネスの成否はつくづく商品力によると思った次第だった。
シートステッチまで「こだわり」がうかがえる
ノンプレミアムでありながらプレミアムセグメントイーター的な商品力を持つモデルは今後、さらに増えてくることが予想される。そのときに既存のプレミアムブランドはどう振る舞うのだろうか。
そういう流れをあまり恐れていないのは、スウェーデンのボルボ、日本のレクサスなど、プレミアムセグメントのなかでは後発のチャレンジャー側で、価格も安めのバジェットプレミアムである。
いかにもノンプレミアムの突き上げを最初に食らいそうなポジションのように思えるが、彼らはもともと超高性能という枠組みではなく、それぞれのセンスをベースに商売をしている。たとえばボルボは型にはまった虚飾よりもライフスタイルに豊かさを求める北欧流の美意識を看板にするなど、文化で差別化を図れると自信を示している。