江戸時代の食文化は大きく発展を遂げた

江戸時代の食文化は大きく発展を遂げた(写真/AFLO)

 加えて同書には、そばやうどんなどの麺類や肉類も「食べてはいけない」と記されている。特に肉類への言及には熱がこもる。

《年老ては歯も弱く、或は脱る類の人多ければ、猶更肉味を食ふべからず》《その煮たる汁ばかりを吸て気血をますたすけとすべきなり》《魚味の類又は味のよきほどの鳥肉などをくらふ事、養ひにかなひてよろしかるべし》

 歯にも悪影響を与えるとして肉食を控える提案をし、とるならその煮汁だけにせよ、また牛豚ではなく魚や鶏肉にすべしというわけだが…。

「そばやうどんは、つるつると食べられてしまうため、かまずに飲みこんで食べすぎてしまい、大量に摂取すると弊害があります。

 しかし肉食は別です。おそらく当時の時代背景として、肉食が一般的でなかったからだと思いますが、動物性たんぱく質は栄養価が高く積極的にとるべき。煮汁にも栄養素が溶け出すため効果がないわけではありませんが“本体”も食べた方がいいでしょう。もちろん鶏肉だけでなく、牛豚を含め、いろいろな肉をバランスよく食べた方がいい」

◆適量のお酒は体にいい

 では“百薬の長”といわれるお酒に関してはどうだろう。

《老人の気血をやしなふ事、酒にまされる物なし》《朝夕の食後にあたためて己が酒量よりもひかへめに飲べし》

 お酒は老人の体によく、四季を通して人肌くらいの温度のお酒を適量飲むことを推奨している。肝心なのは「適量」について。牛山は“自分の酒量よりも控えめに”を勧めている。たしかに、現代の医学に基づく最新の知見でも「適量の酒は高血圧や脳卒中を防ぐ」というデータがある。

「ただし、自分で適量だと感じる量は、すでに“容量オーバー”のことがほとんど。そうなると病気のリスクも上がりますので、くれぐれも飲みすぎには注意してください」

 牛山も「生まれつき酒が飲める人は少量では楽しめず、飲みすぎて大病になる」と指摘している。肝に銘じたい。

※女性セブン2019年9月5日号

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