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山田詠美氏、血の繋がりよりも濃密な時間の共有にこそ価値あり

「今の世の中に言いたいこと、ぶちまけます」と題するイベントを行った山田詠美さんと中川淳一郎さん

 8月5日、東京・下北沢の本屋B&Bで開催されたイベントは大盛況に終わった。作家・山田詠美さんが、ネットニュース編集者の中川淳一郎さんの依頼に応えて登壇したのだ。題して「今の世の中に言いたいこと、ぶちまけます」。

 中川さんの元上司である博報堂ケトルの嶋浩一郎さんが司会を務めた2時間にわたる鼎談。2人が語る芥川賞の騒動や「なっとらん、ドーン!」と机を叩いたことなどに、会場は大いに沸いた。

◆失う怖さを知っていると人生の向き合い方が変わる

 くだけた話題でひとしきり盛り上がった後は、お互いの死生観を語るタームへ。人と出会うことの面白さや、それと表裏一体な大切な人をいつか失うことの恐怖について。「失った経験」を持つ大人だからこそわかる人生の実感とは…。

嶋:ところで、ネットをやらない山田さんが、『ウェブはバカと暇人のもの』という本を出すような中川の本を読み始めたきっかけは何だったんですか。

山田:私、書店を徘徊するのが好きなんですよ。恋愛と一緒で、出会い頭のハプニングの楽しみがあるから。そうすると、自分に合う本と目が合う時があるんです。中川くんの本もそう。目が合って読んでみたら、すごく面白かったの。私がいちばん好きなのは『夢、死ね!』(星海社新書)ですね。あれは素晴らしい、若者に読ませるべき一冊ですよ。

中川:本当ですか。ありがとうございます。山田さんが僕について言及してくれたのは、『縁の切り方』(小学館新書)でしたよね。

山田:そうそう。私はあの本を読んで、「この人は失うことを知ってる人なんだな」と感じました。

嶋:中川はあの本をどういう動機で書いたの?

中川:あれは、僕の元婚約者が自殺したことがきっかけです。彼女以外にも僕はいろんな人と交流しましたが、でも結局、死んだ彼女が自分にとっていちばん大事だったんです。言ってみれば、そこまで重要な人の自殺を止められなかったという後悔から書いた本です。

山田:新しい何かに出会うことと、それを失うことって裏表じゃないですか。いちばん大切な人を、明日失うかもしれない。そういう怖さを抱えているかいないかで、人生を大事にする方法って全然違ってくるよね。

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