躍動感あふれる千賀の投球フォーム
成果はすぐに表われる。今季の開幕戦では、自己最速の161キロを記録して6回無失点と好投した。だが、急速な肉体の変化は副作用も伴った。
「自分の中で、投げ方のイメージが変わったので、フォークボールを含めた変化球をうまく操れなくなって……迷子になってしまった感じですね。6月からはストレートの軌道に近いスラット(スライダーとカットボールの中間球)の習得にチャレンジしていて、何とかシーズン中に自分のモノにしたいのですが……。今季はそんな試行錯誤のマウンドが続いています」
代名詞「お化けフォーク」の精度を一旦、捨ててまでも新たな自分を求める選択をした。そんな千賀が目指す投手像とは? エースとは勝つ投手なのか、負けない投手なのか、それとも信頼される投手なのか。
「実は、明確に『これだ!』という形はまだ掴んでいないんです。これまでは、勝つよりも負けないことが大事だと思っていた。でも最近はチーム全体が『こいつが投げているんだから、この試合は勝つんだ!』という存在がエースなんじゃないかと。今、そういう人はそんなにいないんじゃないかと考えるようになりました」
勝利投手となった8月10日の日本ハム戦。千賀は5回に4失点するも、7回まで粘り強くマウンドを守り続け、味方の逆転を呼び込む。味方攻撃中は、高校球児のようにベンチ最前列で声を出してチームを鼓舞した。
「試合後に松田(宣浩)さんや(甲斐)拓也が『ベンチのお前の姿を見て打とうと思った』と言ってくれて嬉しかったですね。もちろん、試合中だけでなく、練習への態度など普段の姿勢も大事。投手としてどうあるべきか。斉藤和巳さんに相談して、最近、そういうふうに考えるようになりました」
エースは人気も抜群