国際情報

曹国法相と韓国社会 「虚言と欺瞞」はなぜ蔓延するのか

韓国の曹国法相(EPA=時事)

 日韓関係が戦後最悪の状況のなか、数多の疑惑にもかかわらず、曹国(チョ・グク)氏の法務長官(法相)任命を強行した文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対して韓国世論は猛反発している。曹国新法相は、ポスト文在寅といわれ、検察改革を旗印にし、反日姿勢を鮮明にしているものの、国民の大多数が怒り心頭なのだ。理由は文在寅政権発足後、大統領府情民首席秘書官に就任し、曹氏の妻や2人の子どもら親族6人が、就任2か月後に計約14億ウォン(約1億2000万円)をファンドに出資し、多額の利益を得たことが明らかになったからだ。実際に曹氏の親族で“家族ファンド”の実質的オーナーの男が横領などの罪で逮捕されている。さらには曹氏の娘の名門大学院不正入学の疑惑も注目を集めている。

 娘の進学に有利になるよう大学の総長の表彰状を偽造したとされる曹氏の大学教授の妻が、職場から証拠が残っているとされるパソコンを運び出したり、自宅パソコンのハードディスクの交換を指示したとして、検察は証拠隠滅の疑惑が浮上した妻を私文書偽造の罪で在宅起訴した。まさに「疑惑のデパート」状態の曹国氏も普通ならば任命されても断るのが普通だろうし、任命する方も見識が疑われても仕方ない。しかし、『韓国を蝕む儒教の怨念~反日は永久に終わらない』(小学館新書)の著者である呉善花氏からすれば、これが韓国の昔からの常識だという。

 * * *
──法相という捜査機関に絶大な権力を持つ立場の人間が、カネの不正で疑惑視されること自体が大問題だ。

呉善花:儒教は徹底した現世主義です。どういう現世主義かというと、高い徳をもって品位ある生活を送ることを人生最大の目的とする現世主義です。ですから儒教文化の社会では、富とか職業というのは、そうしたよき人生の目的を達成するための、現実的な手段にすぎない。

 ところが現実はこれと逆になります。つまり、高い徳をもって品位ある生活を送るためには、富を手にすることがなんとしても必要だ、ということになるのです。そこから、「犬のように儲けて両班(ヤンバン)のように使う」という、李朝時代からの韓国に特有のことわざが出てくるのです。両班とは、李朝時代の貴族身分で高級官僚の文班と武班の総称です。 

 このことわざがいっているのは「汚く儲けてきれいに使う」ということで、「悪銭身につかず」という日本のことわざとは正反対の意味です。ようするに、「将来は高い徳をもった人となって世のため、人のためにお金を使うのだから、金持ちになるまではどんなに汚い儲け方をしてもかまわない」ということを意味します。韓国では、こうした不正・腐敗が普通に行われるのです。

──娘の問題は日本でいえば、いわゆる裏口入学に相当する。通り一遍の疑惑否定会見をしただけで法相に就任する曹国氏の神経が理解できない。

呉:1922年に、韓国文学の父といわれるイ・グァンスが書いた『民族改造論』という論考のなかで、朝鮮民族の改造すべきところをいくつか説いていますが、その最初に「虚言と欺瞞」を挙げています。彼は「虚言と欺瞞」を“悪しき国民性の傾向”の第一としたのですが、これはそのまま現在についての発言としてもおかしくありません。今の韓国は100年前の当時と何も変わっていないのです。

 なぜ、韓国では「虚言と欺瞞」が蔓延するのでしょうか。いうまでもなく、最も大きな影響を与えているのが、伝統的な儒教のモラルです。韓国人は何よりも血縁親族を大切にします。ですから、血縁親族についてはその罪を隠すことが正直ということにわけなのです。こうして、身内のために実際に行われる「虚言と欺瞞」が道徳的な正直となっているのです。韓国の犯罪で、偽証罪が世界的に群を抜いて多いことはよく知られていますが、親族・友人を助けるために嘘をつくこと、「虚言と欺瞞」を弄することが善であるという教育を受けた、古くからの“身内主義”の考え方があるからにほかなりません。こうして、「嘘をたいしたことと思わない社会の風潮」が蔓延していくのです。

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
《ヤクザの“ドン”の葬儀》六代目山口組・司忍組長や「分裂抗争キーマン」ら大物ヤクザが稲川会・清田総裁の弔問に…「暴対法下の組葬のリアル」
NEWSポストセブン
テンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《キョンシーブーム『幽幻道士』美少女子役テンテンの現在》7歳で挑んだ「チビクロとのキスシーン」の本音、キョンシーの“棺”が寝床だった過酷撮影
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
女優・趣里の結婚相手は“結婚詐欺疑惑”BE:FIRST三山凌輝、父の水谷豊が娘に求める「恋愛のかたち」
NEWSポストセブン
タレントで医師の西川史子。SNSは1年3ヶ月間更新されていない(写真は2009年)
《脳出血で活動休止中・西川史子の現在》昨年末に「1億円マンション売却」、勤務先クリニックは休職、SNS投稿はストップ…復帰を目指して万全の体制でリハビリ
NEWSポストセブン
中川翔子インスタグラム@shoko55mmtsより。4月に行われた「フレンズ・オブ・ディズニー・コンサート2025」には10周年を皆勤賞で参加し、ラプンツェルの『自由への扉』など歌った。
【速報・中川翔子が独立&妊娠発表】 “レベル40”のバースデーライブ直前で発表となった理由
NEWSポストセブン
板倉東洋大前駅Pの駅情報。1日平均乗降客数は2023年度で3,404人(東武鉄道HPより)
《大学名を冠した駅名は大学が移転したらどうなる?》東洋大学と北海道医療大学のキャンパス移転で、駅名を巡る「明暗」
NEWSポストセブン
奈良公園で盗撮したのではないかと問題視されている写真(左)と、盗撮トラブルで“写真撮影禁止”を決断したある有名神社(左・SNSより、右・公式SNSより)
《観光地で相次ぐ“盗撮”問題》奈良・シカの次は大阪・今宮戎神社 “福娘盗撮トラブル”に苦渋の「敷地内で人物の撮影一切禁止」を決断 神社側は「ご奉仕行為の妨げとなる」
NEWSポストセブン
“凡ちゃん”こと大木凡人(ぼんど)さんにインタビュー
「仕事から帰ると家が空っぽに…」大木凡人さんが明かした13歳年下妻との“熟年離婚、部屋に残されていた1通の“手紙”
NEWSポストセブン
太田基裕に恋人が発覚(左:SNSより)
人気2.5次元俳優・太田基裕(38)が元国民的アイドルと“真剣同棲愛”「2人は絶妙な距離を空けて歩いていました」《プロアイドルならではの隠密デート》
NEWSポストセブン
『ザ・ノンフィクション』に出演し話題となった古着店オーナー・あいりさん
《“美女すぎる”でバズった下北沢の女子大生社長(20)》「お金、好きです」上京1年目で両親から借金して起業『ザ・ノンフィクション』に出演して「印象悪いよ」と言われたワケ
NEWSポストセブン
花の井役を演じる小芝風花(NHKホームページより)
“清純派女優”小芝風花が大河『べらぼう』で“妖艶な遊女”役を好演 中国在住の実父に「異国まで届く評判」聞いた
NEWSポストセブン
第一子を出産した真美子さんと大谷
《デコピンと「ゆったり服」でお出かけ》真美子さん、大谷翔平が明かした「病院通い」に心配の声も…出産直前に見られていた「ポルシェで元気そうな外出」
NEWSポストセブン