それを前提に朝日の報道を見て欲しい。文化庁が補助金7800万円を全額不交付にした翌日、朝日は前述のように問題の作品群の「真実」に触れないまま、計5面も使って文化庁攻撃に出たのである。

 あまりに膨大な記事量なので、見出しだけを列挙しよう。1面では、

〈芸術祭 国の補助交付せず〉〈不自由展 文化庁「申告に不備」〉〈愛知知事、提訴へ〉

 また2面では、

〈表現と公権力 波紋〉〈「手続き理由」前例なし〉〈官邸 展示にいらだちも〉

 14面の社説では、

〈あいち芸術祭 委縮招く異様な圧力〉

 31面の「文化・文芸」欄では、

〈「表現の不自由展」は問う〉

 と題して、一問一答形式で記事を掲げた。そして35面の社会面では、

〈芸術祭補助金不交付 「全ての表現脅かす」〉

 そんな見出しが躍ったのである。これで日本の表現の自由は失われた、という実にヒステリックな論調だ。

「表現の不自由展・その後」に展示された彫刻家キム・ソギョン氏、キム・ウンソン氏夫妻の「平和の少女像」(時事通信フォト)

 紙幅の関係で、ここでは社説(14面)だけを取り上げる。冒頭で、

〈表現行為や芸術活動への理解を欠く誤った決定である。社会全体に萎縮効果を及ぼし、国際的にも日本の文化行政に対する不信と軽蔑を招きかねない。ただちに撤回すべきだ〉​

 と社説は明確に主張する。

〈脅迫や執拗な抗議によって企画展の一つが中止に追い込まれた「あいちトリエンナーレ」について、文化庁が内定していた補助金約7800万円全額を交付しないと発表した。前例のない異常な措置だ。​

 萩生田光一文部科学相は「申請のあったとおりの展示が実現できていない」などと、手続き違反や運営の不備を理由に挙げた。だが、この説明をそのまま受け入れることはできない。​

 中止になった「表現の不自由展・その後」には、慰安婦に着想を得た少女像や、昭和天皇を含む肖像群が燃える映像作品などが展示されていた。「日本人へのヘイト」といった批判が持ち上がり、菅官房長官は早くも先月初めの時点で補助金の見直しを示唆する発言をしていた。​

 一連の経緯を見れば、政府が展示内容に立ち入って交付の取り消しを決めたのは明らかだ。それは、「政府の意に沿わない事業には金を出さない」と内外に宣明したに等しい〉

 ここでも「昭和天皇を含む肖像群が燃える映像作品など」とされていることに注目して欲しい。決して「昭和天皇の肖像をバーナーで焼き、燃え残りを足で踏みつける映像作品」であることには言及しないのだ。「燃える」と「バーナーで焼き、燃え残りを足で踏みつける」は、天と地ほども違う。そして、朝日の社説は、さらに少女像が原因であることへと読者を導く。

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