ライフ

生前に遺影撮影する人増加、高齢者の笑顔を引き出すコツとは

ニュアンスが変わるメイク

“終活ブーム”が到来している。中でも、最近では自分の遺影を撮影する人が増えているとか。高齢者のいい笑顔を引き出すコツは何だろう? その火付け役の1つ、東京・巣鴨の『えがお写真館』には、全国各地からの来店者が月100人を超えるという。高齢者のいい笑顔を引き出すコツは何かを探った。

 遺影撮影前のヘアメイクを担当するのは赤坂渉さんほか、プロのメイクアップアーティストたち。あちこち衰えてかなり自信喪失気味の高齢世代を、化粧の力でグッと押し上げる。

 どんな裏技で、どこを盛るのかと思えば、赤坂さんのメイクは驚くほどシンプル。でもそれがイキイキと魅力的に写る秘訣なのだという。

「メイク技術やつけまつげなどで美しさを演出するのではなく、その人自身が素敵になることが大事。つまり“変身”ではなく“その人らしい素敵”を引き出すのです。できあがった時、同行されたご家族が“おかあさん、すごくいい!”と感激されるのは、まさにその手応え。メイクではなく自分がほめられる喜び。本人も自信に満ちた笑顔になります」(赤坂さん)

 女優やタレントのメイクも多く手掛けている赤坂さん。その現場の雰囲気を生かすべく、写真館のメイクブースは女優ライトと呼ばれるハリウッドランプで照らされ、プロモデルも使うブランドの化粧品や道具がズラリ。ちょっとした女優気分も味わえる。

◆カメラの前で出会えるもうひとりの自分!

 ヘアメイクで気分を上げていよいよ撮影だ。基本的な立ち位置や姿勢は指示されるものの、ポーズは自由。自分で動くのだ。

「なかなか笑えない人も少なくありません。ポーズも顔も一発勝負だったフィルム撮影世代ということもあるかもしれませんね」と言うのはフォトグラファーの吉原潤一さん。シャッターを切りながら、ゆっくりとしたやさしい口調で声を掛ける。

「人柄はいろいろでも、みなさん一様にコンプレックスを持っておられるのは感じます。初めに定番のポーズで撮る時は完全に受け身。でもコンプレックスを気にしつつ動き始めると、だんだんのってくる。きれいなポーズ、自分の好きな表情、角度など、カメラがご本人と一緒に“素敵な自分”を探っていきます」

 実際の撮影現場を見せてもらい、その“探り”の場面を目撃した。

メイクを体験した古谷芳子さん(写真/古谷さん提供)

 緊張気味で表情の硬かった女性(70代)は、「いいですね」「もう少し笑ってみて」と言う吉原さんに呼応するように、少しずつ表情や体勢を変え「あ! そこだ! いい表情です!」と言う声と同時に、うれしそうに表情が和んだ。

 知的で穏やかなその女性らしい笑顔が画像になっていた。すごい! 吉原さんと女性の息がぴったり合った瞬間だった。

「自分から動くなんて絶対無理!と、たいていの人が思っているのですが、のってくるとどんどん楽しくなる。もしかしたら普段の自分とは違う自分になっているのかも」と、『えがお写真館』代表の太田明良さん。

 また、『えがお写真館』を1年前に利用した古谷芳子さん(66才)は、終始、女王様のように扱われて最高だったと語ってくれた。

「赤坂さんにはプロのメイク術やいい化粧品を伝授していただいてリッチな気分になったし、撮影中にはスタッフのみなさんが口々にほめてくれるの。どれだけハイテンションにさせるのって、体の中から元気になる感じ(笑い)。それが写真で残るのもうれしいですね」(古谷さん)

 基本プラン(1.5~2時間、撮影・ヘアメイク・持ち込み服のコーディネート・データ付きアルバム台紙)でひとり2万1384円。

※女性セブン2019年10月10日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト