「最初はほかの獣医師から冷たい態度を取られていました。こんな医学的根拠のないものは怪しいと言われたこともあります。そんなこともあり、当初は収入がほぼゼロ。仕事が入っても1~2件で1か月の収入が2万円なんてことが1年ほど続きましたね」
それでもめげず、獣医師が集まる勉強会にも頻繁に顔を出し、動物義肢装具の必要性を訴え続け、獣医学も学ぶ中、’15年に獣医師の学会で発表の機会を得るなど、少しずつ認められるようになっていく。
◆体形に合わせて一つひとつ手で作る
装具作りは、まず獣医師から依頼を受け、症状などの説明を聞くことから始まる。
「椎間板ヘルニアの補助器具など、ある程度、形が決まっているものであれば、獣医師が計測したサイズに基づいて補助具を作ります。でも、複雑な骨折や義足の場合は、会いに行くことが多いですね」
たとえば、足が変形している場合、どのような状況でそうなったのか、どんな状態なのかを細かく聞き、どんな義肢装具が必要かを想定。その後、作業に入る前に会って計測を行い、左記のような手順で進めていく。
依頼の9割が犬で、残りは猫やフェレット。病気の多くは椎間板ヘルニアなどの脊椎疾患だ。
「犬は人間と同じような病気やけがをするのに、痛みや不便を細かく訴えることはできません。獣医学の本には、椎間板ヘルニアは、ケージにタオルを敷き詰めて犬を入れ、固定させるという治療法しか書かれていません。それでは犬は身動きができずにつらそうだし、そんな姿を見た飼い主もつらい。
そこで、ぼくはコルセットを作ったのですが、これなら動きは制限されるものの排泄もできるし、着脱可能で洗濯もできます。そして何よりある程度、歩くこともできるようになりました」
義肢装具を装着し、動物が歩き出す姿を見ると、飼い主も安心するという。
【Profile】島田旭緒さん(38才)/東京都町田市で12年前に動物用義肢装具メーカー『東洋装具医療器具製作所』を立ち上げ、年間3000件以上、これまでに2万匹におよぶペットの義肢装具を製作している。
※女性セブン2019年10月17日号