国際情報

ケニアのサバンナを走る“中華鉄道”に乗ってみた

サバンナを突っ切る“中華鉄道”の高架橋。手前には野生のキリン(撮影:安田峰俊)

 ツァボ国立公園のエリアでは、バオバブの林や岩場、草原などが次々と列車の窓の外を流れていくなかで、シマウマやキリンの姿がしばしば見られた。最初は珍しかったゾウも、やがて何度も出会うようになり、ヴォイ駅の手前あたりでは子ゾウ数頭を引き連れた母ゾウたちが歩く群れにまで遭遇した。

 朝日新聞記者・三浦英之の著書『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』(小学館)によれば、ケニアでは密猟された象牙が中国人のブローカーを通じて売買されており、なかには中国大使館の関与が疑われる例もあるという。この国では列車に乗ってもゾウに出会っても、常に中国の影がちらついてしまう。

 やがて夕方になると、進行方向である東の空だけが夜になり、後方の西の空はまだ昼間という不思議な光景が車窓に広がった。まったく建築物がなく地平線が広がっている、大自然の中心にいるからこそ見られる奇景だ。

 モンバサ駅に到着したのは夜7時だった。例によって駅舎は中国国内と瓜ふたつである。

 駅から市の中心部までは車で20~30分かかる。夜なのに、治安に不安が残るミニバス以外に公共交通機関がなくウーバーも近くにいなかったので、やむを得ず割高な白タクを利用せざるを得なかった。

 駅舎や車両といったハード面は立派だが、市内の中心部ではなく郊外に駅があり、しかも市内までの公共交通機関がまともに整備されてないという顧客利便性を無視した設計は、中国の新設鉄道駅のお約束だ。出発・到着時に市内と駅との移動で合計1時間くらいをロスしてしまうため、鉄道それ自体はハイスピードでも、いまいち迅速に移動している感じがしない──。

 ケニアのSGRは、そんな困った部分まで中国そのままなのであった。

香港デモを取材中の安田峰俊氏

*『もっとさいはての中国』(小学館新書)を一部抜粋のうえ再構成。文中敬称略。同書刊行イベント「中国ワンダーランドに魅せられて」(安田峰俊氏×星野博美氏対談)が10月13日に旭屋書店池袋店にて行われます。(詳細→https://www.asahiya.com/shopnews/

関連キーワード

関連記事

トピックス

鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン