国際情報

ケニアのサバンナを走る“中華鉄道”に乗ってみた

サバンナ“中華鉄道”の旅はここ、ナイロビ駅から始まる(撮影:安田峰俊)

 近年、中国のアフリカ進出が目覚ましい。中国とアフリカ諸国の政治的・経済的な結びつきが強まる一方で、多額の援助やインフラ整備の見返りに利権を手にするやり方には「新植民地主義」との批判もある。実際の現地の様子はどうなのか。『もっとさいはての中国』著者の安田峰俊氏が、アフリカ・ケニアに開通した“中華鉄道”の乗車取材を敢行した。

 * * *
 銀色の壁と人工的な造形は、横向きに倒したステレオを連想させる。その上に赤いアルファベットで「NAIROBI TERMINUS」(ナイロビ駅)と書かれている。

 ここはナイロビ郊外にあるSGR(=Standard Gauge Railway。中国の融資で建設された)の始発駅である。ケニアの首都ナイロビから港湾都市のモンバサまでを結び、3年半の工事期間を経て2017年5月末に開通した。建設事業費はケニア独立後最高額の38億ドル(約4000億円)にのぼり、施工をおこなったのは中国国有ゼネコンの中国路橋(CRBC)だ。

 セキュリティ・チェック用に設けられた白テント内へ進むと、蛍光色のベストを着たケニア人のセキュリティスタッフ数人が監視するなかで、中国国内の公共交通ではおなじみのX線手荷物検査機が稼働していた。マシンは中国企業の威視(NUCTECH)製だ。これは胡錦濤前国家主席の息子が創業者で、中国全土の150カ所近い空港すべてに検査機を納入するなど、権力と結びつく形で独占的にビジネスを展開している企業である。

 ケニアはテロが多いためかSGRのセキュリティ・チェックは空港さながらだ。手荷物検査の後にはスタッフが片手持ちの金属探知機を使って全身をくまなくチェックしてくる。

「この金属を探すマシンも中国製かい?」

「そうだ。あれもこれも全部、あんたの国の製品だよ。中国はすごいな!」

 セキュリティスタッフたちは私を中国人だと勘違いしたらしく、陽気に教えてくれた。

 白テントを抜けるとようやく駅舎である。チケットオフィスのやけに天井が高いホールや、ガラス張りの向こうにいる駅職員に声をかけてチケットを買うシステムは、中国の鉄道駅とそっくりだ。なによりチケットの紙が中国国内の鉄道とほぼ同じである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

昭和館を訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年12月21日、撮影/JMPA)
天皇ご一家が戦後80年写真展へ 哀悼のお気持ちが伝わるグレーのリンクコーデ 愛子さまのジャケット着回しに「参考になる」の声も
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
《ジャンボ尾崎さん死去》伝説の“習志野ホワイトハウス豪邸”にランボルギーニ、名刀18振り、“ゴルフ界のスター”が貫いた規格外の美学
NEWSポストセブン
西東京の「親子4人死亡事件」に新展開が──(時事通信フォト)
《西東京市・親子4人心中》「奥さんは茶髪っぽい方で、美人なお母さん」「12月から配達が止まっていた」母親名義マンションのクローゼットから別の遺体……ナゾ深まる“だんらん家族”を襲った悲劇
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
1年時に8区の区間新記録を叩き出した大塚正美選手は、翌年は“花の2区”を走ると予想されていたが……(写真は1983年第59回大会で2区を走った大塚選手)
箱根駅伝で古豪・日体大を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈3〉元祖“山の大魔神”の記録に挑む5区への出走は「自ら志願した」
週刊ポスト
12月中旬にSNSで拡散された、秋篠宮さまのお姿を捉えた動画が波紋を広げている(時事通信フォト)
〈タバコに似ているとの声〉宮内庁が加湿器と回答したのに…秋篠宮さま“車内モクモク”騒動に相次ぐ指摘 ご一家で「体調不良」続いて“厳重な対策”か
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト
米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン