◆乾電池式のモバイルバッテリー(乾電池を大量保管)
リチウムイオン電池を内蔵したモバイルバッテリーは、停電で充電できない状況になったとき、貯めていた分を使い切ってしまうともうそれで終わり。停電が長期化すると、ただの“文鎮”と化す。しかし、乾電池式のモバイルバッテリーであれば、乾電池を大量にストックしておけば、長期にわたって利用できるはずだ。
「単3の乾電池を3~4本使う製品が一般的ですが、それだとスマホの容量の半分くらいしか充電できません。それから、乾電池は2年くらい使わずに保管しておくと、劣化してダメになるので、いざというときに使えないということも。新しい乾電池を買えばいいと思うかもしれませんが、災害が起きるとコンビニではすぐに売り切れます。ですから、乾電池式は(その他の手段が使えないときの)緊急用ですね」
とはいえ、乾電池を大量にストックしておいて、古い順から別の用途で使っていき、使った分だけ補充していくという運用法はありうる。面倒かもしれないが……。
◆車から充電(シガーソケット式USB充電器)
車のシガーソケットに挿すとUSBに変換して車のバッテリーの電力を供給してくれるアダプターが、コンビニなどでも1000円前後で売られている。車を発電機として利用するわけだ。
「ガソリンがある限り充電できますから、これも悪くない。USBではなく、家庭用のACコンセントに変換できるアダプター(4000円前後)もあり、これだとスマホの充電だけでなく小電力の家電も使えます」
問題は充電のためにガソリンを消費することで、台風の上陸が予想されるときは、あらかじめ満タンにしておくことが大事だ。
◆カセットガス発電機
ホンダ、ヤマハなどが発売する、卓上コンロ用カセットボンベを使うエンジン発電機がある。価格が12万円前後と高価なのが難点だが、これもカセットボンベがある限り発電可能だ。
「スマホの充電用というよりは、小電力の家電を使うのに向いています。カセットボンベ1本あたりで1~2時間程度しか発電できず、ガソリンなどを燃料にする発電機より出力も小さいのですが、燃料の取り扱いが簡単なのが利点です」
ガソリンを家庭で保管する場合、保管量については法的規制がかかるが、カセットボンベには規制はなく、充電池や乾電池のように時間が経つと自然に減ることもないので、これも運用次第で十分役立てることができる。
また、一般的なモバイルバッテリーは非力とは言え、複数台あればそれなりに有効な手段になる。筆者はスマホに充電するモバイルバッテリー機能をもつ自転車用ヘッドライト(充電池式)を家族の自転車すべてに取り付けている。懐中電灯としても使えるので、台風上陸の前に満充電にしておこうと考えている。
和田氏のお奨めは、ソーラー式モバイルバッテリーとのことだが、「複数の手段を準備しておくことがリスクを下げるうえで重要です」という。それが正解だろう。
●取材・文/清水典之(フリーライター)