管理会社、コンサル事務所、施工会社は裏でつながっている!
また、施工会社の入札は、応募してきた各社が管理会社や設計コンサルが作成した仕様書に基づき工事内容の見積もり額を出し、一番安い金額を提示した会社が落札する流れが一般的だが、そこにも巧みな罠が仕掛けられていることが多い。前出の土屋氏はこんな衝撃的な事例を明かす。
「公募に名乗りを挙げた5社がすべて“お仲間”で、管理会社や設計事務所とグルになってチャンピオン(受注予定会社)が5社分の見積もり額をコントロールしている──なんてケースはよくあります。しかも、事前に知る由もない修繕積立金残高に近い金額を出してくる。完全にマンションの“懐具合”が漏洩しているんです。
最近は必ずしも一番安い会社がチャンピオンというわけではありません。マンションの管理組合が各施工会社のヒアリングをする時に、例えば見積もり額は高くても、ゴミ置き場の重い扉を改修したり、自転車置き場に屋根をつけたり……といった住民のかゆい所に手の届くサプライズ工事を仕組むこともあります。
そうした住民の要望が5社に伝わっていたとしても、あたかも宿題を忘れたかのようにチャンピオン以外の会社は提案しなかったりするのです」
じつに巧妙な手口で“談合隠し”が行われているのだ。しかし、談合を主導する管理会社や設計コンサルタントは、どうやって施工会社からバックマージンを捻出させているのか。
「大規模修繕をする前に、住民側が依頼したコンサルタントや管理会社の技術系社員がマンションの劣化診断をしに来ることが多いのですが、私が実際に見たケースでは、管理会社の社員を装って、まだ決まってもいない施工会社の社員が診断をしていたことがありました。
決められた工事の単価は、住民に相場を調べられてしまえば法外な金額も提示できないため、例えばマンション屋上の防水面積など、よほどの専門家が図面と現場を確認しない限り見破れない“水増し”を行っています」(土屋氏)
前出の一級建築士によると、マンションの大規模修繕で施工会社から受け取るバックマージンは、「施工費用の2割程度になることもある」という。
施工会社が適正な利益を奪われずにバックマージンを捻出するために、例えば、もともと8000万円の施工費を1億円に水増ししていることも十分に考えられるのだ。住民が毎月1万5000円の修繕積立金を支出していたら、そのうち3000円は純粋な工事費ではなく、業者間のバックマージンに消えたことになる。
「談合されたからマンションの質が落ちるということはありませんが、本来払わなくてもいいお金を取られていると、築30年、40年たった時に住民の積立金負担がさらに増し、健全なマンション管理ができなくなる可能性があります」(土屋氏)