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資生堂・魚谷雅彦社長 プロ経営者の評価を上げた3つの手腕

 トランプ大統領は選挙公約で連邦法人税を35%から21%に引き下げる税制改革を進めた。トランプ氏の税制改正は米国に進出している日本企業の最終利益を押し上げ、資生堂も恩恵を受けた。どういうことなのか、少し詳しく説明しよう。

 資生堂のアキレス腱は米国事業だった。2010年10月、米サンフランシスコに本拠を置く自然派化粧品会社ベアエッセンシャルを19億ドル(当時の為替レートで1800億円)で買収した。自然系で強いブランドを持っていなかった資生堂は、米国や欧米市場で販路の拡大が見込めると判断。大型買収に踏み切ったのだ。

 だが、買収後のベア社の業績は低迷した。テレビショッピング用の化粧品を、百貨店でも販売することを狙ったが、これが大失敗だった。百貨店では世界の名だたる化粧品メーカーの高級ブランドが覇を競い合っている。ベア社が食い込む余地はなかった。

 その結果、2013年3月期連結決算で米子会社ベア社ののれん代の減損として286億円の特別損失を計上。8期ぶりに146億円の最終赤字に転落。経営責任を問い、同年4月、末川久幸社長を解任。11年から会長を務めていた前田新造氏が社長に復帰した。

 後に魚谷氏はプレステージ化粧品、ボーダレスマーケティングの成果を背景に、永年の懸案だった“負の遺産”の処理を断行した。

 2017年11月、ペアエッセンシャルののれん代などの減損損失を655億円計上すると発表した。ベア社に絡む減損処理の合計は、のれん代とほぼ同額の941億円に達した。資生堂は巨額の減損処理で2017年12月期の最終利益予想を50億円に引き下げたが、トランプ効果もあって、サプライズ決算となった。

 負の遺産の処理はそれだけではない。2020年度までの中期経営計画では国内外120ブランドのうち、国内を中心に売り上げ規模の小さい28のブランドの販売を中止した。弱小ブランドの廃止と同時に在庫処理も進め、原料の調達方法も見直した。これで2015年から3年間で300~400億円のコストを削減。捻出した全額のすべてを広告宣伝などマーケティングに注入した。

 2015年の新年の広告には米国人気歌手、レディー・ガガを起用した。ガガは東日本大震災の復興支援のため、それまでに5回来日。チャリティーコンサートの売り上げを全額寄付した。独自のファッションでも知られ、写真共有アプリ、インスタグラムを通じて社会への発信力も高い。

 ガガ本人は、「日本にメーキャップ革命を起こすのを楽しみにしています」とツイッターでコメントした。レディー・ガガの起用は資生堂ブランドの再生に賭けた魚谷氏の強い決意の表れだった。

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