ノーベル化学賞受賞の吉野彰氏(時事通信フォト)

ノーベル化学賞受賞の吉野彰氏(時事通信フォト)

 今年の京大合格校の顔ぶれを見ると、首都圏では国立(東京)19人を筆頭に、浦和・県立(埼玉)18人、西(東京)16人、海城(東京)15人、麻布(東京)13人、千葉・県立、渋谷教育学園幕張(千葉)、桐朋(東京)各10人、小石川中教、開成、渋谷教育学園渋谷(いずれも東京)各9人などとなっている。トップ3はいずれも公立高だ。

 特にトップの国立は東大合格者が16人で、東京にある学校にもかかわらず、東大より京大合格者のほうが多い。京都で学びたい受験生も多いようだ。

 女子校では女子学院(東京)6人、桜蔭(東京)、雙葉(東京)、洗足学園(神奈川)各4人など。東京にも多くの大学があるが、一人暮らしをしてでも京大で学びたいということだ。1校当たりの合格者数は多くないが合格校は多い。

 学校事情に詳しい安田教育研究所の安田理代表は、「首都圏の優秀な女子層は、東大の権威主義的で縦割りの古い体質を嫌い、女性教員が少ないことも敬遠されている理由と聞きます。それもあって首都圏で自由な校風の京大人気が高まっているのでしょう」と言う。

 京大への首都圏からの合格者が増え始めたのは2012年からだ。合格者が前年の188人から244人に56人も増えた。これは2011年の3月11日に起こった東日本大震災の影響が大きかったと見られる。

 この年は余震が続く中、震災直後はコンビニで食料品、飲料水が品切れ状態になり、東京電力福島第一原発の事故により計画停電が実施され、首都圏では水道水のヨウ素が基準値を超え乳幼児に水が配られるなど、世の中は騒然としていた。この時の受験生は、東京にいてはゆっくり勉強できないと考え、京大志望に切り替えたと見られる。

 そのうえ、2012年には山中伸弥教授がノーベル賞の生理学・医学賞を受賞する。現役の京大教授ということもあって、京大人気はより一層高まり、2013年入試では首都圏からの合格者がさらに増えた。今年はじつに381人が合格している。

 京大人気が高まっている要因について、駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長は、こんな見方をしている。

「京大は高校や地方などでの説明会に力を入れていることが人気アップの一因です。模試の結果から見ると、来年入試でも京大の首都圏からの志望者は増えており、その分、東京工業大、一橋大の志望者が減っています。

 ただ、ノーベル賞受賞者が京大出身といっても、受験生は今からでは志望変更はしないので大きな影響はないでしょう」

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