国内

でっちあげドラレコ動画で炎上させられた運送会社社長の証言

高機能モデルが人気のドライブレコーダー売り場(時事通信フォト)

高機能モデルが人気のドライブレコーダー売り場(時事通信フォト)

 ドライブレコーダーの映像だと言われて見せられたら、ほとんどの人が、そこに写っているものは真実だと思うだろう。ところが、たとえ映像であっても恣意的に切り取ることは難しくない。意図的に切り取られたドラレコ動画をアップロードされ、業務への支障が発生したケースについて、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 もはやドライバーにとって必須となった「ドライブレコーダー」。SNS上には、ほとんど毎日のようにあおり運転や危険運転の”証拠”とされる動画がアップされており、そのうちの少なくない事案が事件として立件されたり、テレビ報道されたり…。「ドラレコ」のおかげで、危険運転や事故が減った、との資料は今の所見当たりはしないものの、悪質ドライバーを抑制するには一定の効果があることは疑いようもない。

 埼玉県内で運送業を営むYさん(五十代)も、会社所有のトラック10数台にいち早く「ドラレコ」の導入をいち早く決めた一人。事故の際の証拠にもなるし、保険金の支払いを受ける際にも重要な資料となる。当時、一台5万円以上したが、社員を守るためにも欠かせないツールだと思い、身銭を切った。安全を買った、そんな気持ちでいたのだ。ところが……。

「昨年の夏頃でしょうか、電話を取ると”人殺し”と叫ばれて一方的に切られました。無言電話なども相次ぎ、その日だけで20本近くのいたずらが…。おかしいと思っていたところに、新聞社やテレビ局からの問い合わせがあって、やっと何が起きているのかわかったんです」(Yさん)

 問い合わせてきた新聞記者によれば、Yさんの会社のトラックが危険走行をする一部始終を収めたと称する動画が、ネットに上がり話題になっているという事だった。ネットに疎いYさんだったが、若い事務員に言うと間もなく件の動画を見つけてきた。

「うちの会社のロゴをつけたトラックが、割り込んできてハザードをつけ、高速道路の路肩に停まるまでの一部始終でした。トラックから降りてきて、うちの社員らしき人物が、撮影者であろうドライバーに何か言っているところも映っていましたが音声はない。事故か事件か、トラブルを報告する日報もなかった為に驚きました。うちの社員が何かやったのかと…」(Yさん)

 動画には会社のロゴだけではなく、ナンバープレートや撮影日、時間も載っていた。容易に当該運転手は割り出せたが、勤続20年で大きな事故を起こしたこともない、最も信頼を寄せる50代の運転手だったからYさんは驚くしかなかった。

「創業メンバーで信頼していただけに、まさかという思い。しかし、呼び出して事実確認を行ったところ、ネットで言われていることとは真反対のことを言い出したんです」(Yさん)

 ドライバーの説明によれば、最初に煽ってきたのは、炎上している動画の撮影者と思われるドライバー。トラックの前に出てきて蛇行運転をしたり、急ブレーキをかけるなど危険な運転を繰り返したという。怒った運転手は、その車を抜き返し、注意する為に路肩に停車。安全を確認した上で降車し、文句を言った、というのである。

「ドライブレコーダーにもその一部始終が映っており、運転手の言い分は本当だったとわかりました。ネットに動画をあげている人物は”怖かった”とか”何もしていないのに一方的に煽られた”とネットに書き込んでいましたが、実際には全然違ったんです」(Yさん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

「新証言」から浮かび上がったのは、山下容疑者の”壮絶な殺意”だった
【壮絶な目撃証言】「ナイフでトドメを…」「血だらけの女の子の隣でタバコを吸った」山下市郎容疑者が見せた”執拗な殺意“《浜松市・ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
【体にホチキスを刺し、金のありかを吐かせる…】ルフィ事件・小島智信被告の裁判で明かされた「カネを持ち逃げした構成員」への恐怖の拷問
NEWSポストセブン
グラドルデビューした渡部ほのさん
【瀬戸環奈と同じサイズ】新人グラドル・渡部ほのが明かすデビュー秘話「承認欲求が強すぎて皆に見られたい」「超英才教育を受けるも音大3か月で中退」
NEWSポストセブン
2人は互いの楽曲や演技に刺激をもらっている
羽生結弦、Mrs. GREEN APPLE大森元貴との深い共鳴 絶対王者に刺さった“孤独に寄り添う歌詞” 互いに楽曲や演技で刺激を受け合う関係に
女性セブン
無名の新人候補ながら、東京選挙区で当選を果たしたさや氏(写真撮影:小川裕夫)
参政党、躍進の原動力は「日本人ファースト」だけじゃなかった 都知事選の石丸旋風と”無名”から当選果たしたさや氏の共通点
NEWSポストセブン
セ界を独走する藤川阪神だが…
《セの貯金は独占状態》藤川阪神「セ独走」でも“日本一”はまだ楽観できない 江本孟紀氏、藤田平氏、広澤克実氏の大物OBが指摘する不安要素
週刊ポスト
「情報商材ビジネス」のNGフレーズとは…(elutas/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」は“訴えれば勝てる可能性が高い”と思った》 「情報商材ビジネス」のNGフレーズは「絶対成功する」「3日で誰でもできる」
NEWSポストセブン
入団テストを経て巨人と支配下選手契約を結んだ乙坂智
元DeNA・乙坂智“マルチお持ち帰り”報道から4年…巨人入りまでの厳しい“武者修行”、「収入は命に直結する」と目の前の1試合を命がけで戦ったベネズエラ時代
週刊ポスト
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン