過酷なロケも経験してきた
そんな自身をまた嫌悪して、新宿の路地裏で飲んだくれもした。だが「自分のやり方は曲げられなくて」、岩場にぶつかるような日々が過ぎていった。「ぐだぐだでしたけど、ほかに逃げ場がなかったし、役者にしがみつくしかなかったから」。目を引く個性がありながら、しかし認められることが少なかった遠藤は、やがて「大きく芝居を開眼させられた」という作品に出会う。『天国から来た男たち』(2001年)だ。40歳になっていた。
「仕事したくてしょうがなかった三池崇史監督に、ある店で偶然会って、酔った勢いで『俺を使え!』って掴みかかったんです。翌日、何てことしちゃったんだと青くなったんですけど、まさかの依頼をしてくれまして」
フィリピンの刑務所を借りての、過酷なロケだった。
「『そこでウンコして』から始まりましたから(笑)。それまでの自分の芝居が、いかに型どおりで呪縛されたものだったか思い知らされました。三池さんは魂の底のいちばん大切なものを一個、一個、引き出すもののつくり方。ああ、約束ごとなんて何もない、思いつくままにやっていいんだと、どれだけ開放してもらったかしれません」
この業界での生き方までも自由にしてもらったと言い、その後の活躍には目を見張るものがあった。2011年の『てっぱん』(NHK連続テレビ小説)での、一徹で人情味のあふれる父親役では、どこか暴力的な匂いのする遠藤がこれまでにない顔を見せて、女性ファンが急増したといわれる。素に近かったのかもしれない。
「素朴な両親の影響も、あるかもしれません。ふたりがすごいと思うのは、人に対しての偏見といった意識、どういう育ちでどういう肩書があってとか、そういうものがまったくなかった。それは自分の中にも、ものの見事にない。よかったと思ってます」