各試験とも評価方法は異なるが、スコアを統一基準のCEFR(セファール)に当てはめる。評価はC1、C2、B1……A2の6段階評価だ。試験実施会社にしてみれば、今年のセンター試験で英語を受験した約54万人が2回受検すると、延べ108万人が受験する巨大市場がいきなり出現することになる。
各大学は昨年から今年の初めにかけて、相次いで2021年の一般選抜の入試科目を公表。特に注目されたのが外部英語試験の成績の扱いだった。試験は決められた会場で行われ、離島部、へき地の受験生は、この外部英語試験の受検のために、県庁所在地など都市部に行かなければならない。経済的な負担が増えるし、受検料も高い。地域格差、経済格差は外部試験を利用する限り残るのだ。
共通テスト受検がほぼ必須の国公立大で既に発表されている使い方は、出願要件か加点のいずれか、あるいは合わせての活用だ。
出願要件の場合は、大学が指定した評価を超えていなければ、入試を受けることができない。東京大、京都大などの難関大ではA2以上を指定しているところが多かった。このA2は英検でいう準2級に相当する。私立大でも一般入試で、共通テストと大学独自試験で合否を決める国公立大型の入試を実施する大学・学部も出てきた。外部英語試験の延期で、国公立大、私立大の一部で2021年入試の見直しを迫られている。
この延期は受験生にも大きな影響がある。来年はセンター試験最後の入試となり、浪人すると共通テストを受けることになる。そうなると、新たな対策が必要になるため、来年の受験生は「現役進学」を第一に考えていた。
そのため、来年入試は超安全志向の入試になると見られていた。難関大にチャレンジして落ちることはできないため、より安全な志望校選びをしているということだ。難関大の志願者が減り、難易度50未満の大学・学部の志願者が増え、逆にそのクラスが激戦入試になると予測されていた。
浪人すると受けることになる共通テストで、最大の負担だったのが外部英語試験受検だ。それが延期になったことで、経済的な問題を除けば、絶対浪人できないとの考えは薄らぐことは間違いない。しかし、早々に厳しくなること間違いなしの来年の一般入試を避け、推薦、AO入試を選んだ受験生にとっては今さら方向転換できない。すでに多くの大学のAO、推薦入試の出願は始まっている。
さらに、一般入試で確実に合格できる志望校を選んでいる受験生にとって、来年の2月1日から始まる私立大入試まで3か月という11月1日の段階で延期が発表されて、今から難関大挑戦に舵を切れるのかということもある。今からでは厳しいだろう。最大の被害者は受験生だ。
今年、大学を受けた受験生だってそうだ。来年はセンター試験最後になるため入試が混乱することは必至で、浪人してもメリットは少ない。「今年のうちに大学に入っておこう」と考えた受験生が多かったため、安全志向に切り変わっている。昨年までは難関大の志願者は大きく増えていたが、今年は減少に転じていることを見ても明らかだ。