ビジネス

リクルート事件がなければ江副浩正氏はグーグルを作ったか

リクルート事件は政界を揺るがせた(写真/共同通信社)

 日本の高度経済成長を牽引した「昭和の名経営者」と言えば、松下幸之助、本田宗一郎、小倉昌男などが思い浮かぶ。一方、彼らと肩を並べるほどの成功を収めながら、毀誉褒貶相半ばする人たちがいる。リクルート創業者の江副浩正氏もその1人だ。田原総一朗氏(ジャーナリスト)が語る。

 * * *
 新聞や雑誌を買うのは、政治・経済やスポーツ、芸能などのニュースや情報を読むためで、広告は求めてないのについてくる雑音のようなものでしかない。だが、彼は「広告こそニュースであり情報だ」と捉え、広告しか載っていない雑誌や本を作ってしまった。リクルートを創業した江副浩正による発想の転換である。

 江副は東京大学の新聞部出身。普通は編集部員を目指すのに、彼は営業部員になった。そこで新聞に就職活動用の会社説明会の告知広告を載せたところ、これが受けた。そのまま起業し成功を収めた江副は、日本で初めての“ベンチャー起業家”だった。江副はまた、「社員がすべて経営者である」という考え方で有能な社員を次々育てた。

 しかし、旧来型の産業モデルから抜け出せない日本の財界は、リクルートを「隙間産業」と蔑み、江副を「虚業家」と呼んだ。

 NTTの民営化で民間企業も通信事業に参入できるようになった際、江副は第二電電(第二種通信電気事業、後のKDDI)への参加を試みるが、稲盛和夫(京セラ創業者)にすげなく断わられた。江副はそのことに深く傷ついたという。

 それをコンプレックスとした江副は、不動産事業(リクルートコスモス)にのめり込み、その未公開株を政財官の大物たちに譲渡していった。

 これが贈賄とみなされたのが、1988年に発覚したリクルート事件だった。譲渡リストに閣僚らが名を連ねた竹下登内閣は退陣に追い込まれ、江副も贈賄容疑で逮捕された。リクルート会長の座もこのとき、追われた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

濱田よしえ被告の凶行が明らかに(右は本人が2008年ごろ開設したHPより、現在削除済み、画像は一部編集部で加工しております)
「未成年の愛人を正常に戻すため、神のシステムを破壊する」占い師・濱田淑恵被告(63)が信者3人とともに入水自殺を決行した経緯【共謀した女性信者の公判で判明】
NEWSポストセブン
暑くなる前に行くバイクでツーリングは爽快なのだが(写真提供/イメージマート)
《猛暑の影響》旧車會が「ナイツー」するように 住民から出る不満「夜、寝てるとブンブン聞こえてくる」「エンジンかけっぱなしで眠れない」
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《木漏れ日のなかベビーカーを押す海外生活》眞子さん、苦渋の決断の背景に“寂しい思いをしている”小室圭さん母・佳代さんの親心
NEWSポストセブン
自殺教唆の疑いで逮捕された濱田淑恵被告(62)
《信者の前で性交を見せつけ…》“自称・創造主”占い師の濱田淑恵被告(63)が男性信者2人に入水自殺を教唆、共謀した信者の裁判で明かされた「異様すぎる事件の経緯」
NEWSポストセブン
米インフルエンサー兼ラッパーのリル・テイ(Xより)
金髪ベビーフェイスの米インフルエンサー(18)が“一糸まとわぬ姿”公開で3時間で約1億5000万円の収益〈9時から5時まで働く女性は敗北者〉〈リルは金持ち、お前は泣き虫〉
NEWSポストセブン
原付で日本一周に挑戦した勝村悠里さん
《横浜国立大学卒の24歳女子が原付で日本一周に挑戦》「今夜泊めてもらえませんか?」PR交渉で移動…新卒入社→わずか1年で退職して“SNS配信旅”を決意
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン