10年前よりひとりで生きて生きやすい環境が整っているのも一因か(C)カンテレ
10年前よりもひとりで生きていきやすい環境が整っているのも一因だろう。たしかに、「こんな人、いるんだ!」と驚きを持って受け入れられた “ひとり焼き肉”も、今やチェーン専門店ができている。
「昔は実生活で異性と接していない寂しさが恋愛や結婚への意欲につながったのですが、今はネットなどで人とのつながりが簡単に得られるから、なんとなく満足してしまう。誰かと生活して自分を変える煩わしさより、自由なひとり身を選ぶんです」(大橋さん)
◆結婚に代わる担保がまだない
ならば、《人生100年、あと50年ぐらいひとりでも大丈夫だなあ》と満面の笑みで“ひとり流しそうめん”をする桑野は、このままでいる方が幸せなのではないか。
しかし大橋さんは「50才と同じ状態で100才までいければいいですが、人間そうはいかない」と待ったをかける。
「自分が70才、80才になった姿を想像できる50代の独身男性はほとんどいません。やっと老後が現実的に見えてきて、その時に『やっぱり結婚したい』と思っても手遅れのことが多いのです」
『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)などの著書があるライターの大宮冬洋さんも声をそろえる。
「事実婚など熟年男女のいろいろなケースを取材してきましたが、現状、結婚に代わる“安心”の定義がまだされていないように思えます。実社会には、桑野のように頼れる部下や仲のいい女友達、なじみのカフェ店員など人に囲まれて楽しそうにしているシングル男性のロールモデルが身内や友達にいないからです」
大宮さんは、そういう人には「結婚についてハードルを上げなくていい」とアドバイスしている。
「現にぼく自身も離婚と再婚を経験していて、今は愛知県に住んでいるんですが、初婚の時には東京以外に住むなんて考えられませんでした。本当に自分が大事にしていること…ぼくの場合はそれが食事だったんですが、それ以外の“譲れないこだわり”だと思っていたことは、実は大したことじゃなかったりする。もちろん独身時代とまったく同じ生活を送れるわけではないものの、結婚はそこまで自由を捨てることではないですから」(大宮さん)
桑野に“13年目の春”は訪れるのだろうか──?
※女性セブン2019年11月28日号