ビジネス

夜景列車に星空列車 「夜間経済」に商機を見出す地方鉄道

工場地帯を走る静岡県富士市の岳南電車

工場地帯を走る静岡県富士市の岳南電車

 消費やビジネスの広がりを期待して、主にインバウンド需要を目当てにナイトタイムエコノミー(夜間経済)に注目が集まっている。インバウンドだけでなく国内需要もあると見込んで、夜間に商機を見出す地方鉄道が出現している。ライターの小川裕夫氏が、夜景列車や星空列車の取り組みについてレポートする。

 * * *
 2021年春のダイヤ改正をメドに、JR西日本が終電の時刻を繰り上げる方針を発表した。鉄道は、線路や信号といった施設の保守・点検作業が必要になる。それらの作業は終電後の夜間に実施されるのが一般的だが、終電を繰り上げれば保守・点検の時間は長めに確保できる。JR西日本が終電を繰り上げる背景には、人手不足によってメンテナンス作業に時間がかかるようになり、十分な時間を確保する必要に迫られていることも一因にある。

 しかし、終電を繰り上げれば、その分だけ鉄道の運行本数は減る。比例して、鉄道会社の売り上げも減るだろう。

 それだけではない。鉄道利用者が減れば、駅ナカの賃貸料にも影響が出る。また、駅周辺の飲食店、特に夜間営業をメインにしている居酒屋などは大打撃を受ける。終電を繰り上げるという話は、鉄道業界だけにとどまらず世の中全体を揺るがすトピックでもある。

 近年、働き方改革によって残業時間は削減傾向にある。ゆえに、夜間の鉄道利用者は減少傾向にあると言われている。JR西日本の終電繰り上げは、そうしたトレンドを捉えたものといえるだろう。

 その一方、夜間に商機を見出すローカル私鉄も出てきている。その筆頭ともいえるのが、静岡県富士市の岳南電車だ。

 岳南電車は、東海道本線の吉原駅を起点に岳南江尾駅まで約9.2キロメートルを走る。いかにもローカル私鉄という雰囲気を放つ岳南電車は、沿線に工場が多く立地している。この工場群から貨物列車が発着し、その貨物列車の稼ぎが岳南電車を支えていた。しかし、2012年に貨物事業が廃止。岳南電車は収益の柱を失った。

 旅客に目を転じれば、岳南電車を利用する大半は高校生。ただでさえ沿線人口が減少しているのに、少子化で高校生の需要増は見込めない。貨物廃止は岳南電車存亡の危機でもあった。

「そうした危機に直面し、貨物の売り上げを補う必要性迫られました。そんなときに、地域活性化に取り組む地元団体“フジパク”から『工場夜景を楽しむ電車を走らせてみては?』という提案をいただきました。その提案を機に、2014年は貸切電車として夜景電車の運行を開始したのです」と話すのでは岳南電車鉄道課の担当者だ。

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン